日本の司法おかしいのでは? ゴーン氏逮捕、注視する海外 長期勾留、有罪率、情報リーク

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◆有罪率99.9%、刑事裁判は出来レースなのか?
 次に批判されるのは、弁護士の立会なしに取り調べが行われる点だ。ロイターは、1日8時間の取り調べが数日続くと述べ、大阪の弁護士、秋田真志氏の「容疑者は心配で、自分の言っていることに自信が持てなくなる」「何度同じことを言っても検察官が聞いてくれないことがつらくなる」という言葉を紹介する。エコノミスト誌は、この長時間の取り調べの間に自白が強要されることになり、9割近くの日本の刑事事件は自白に支えられているとしている。シナリオに合う答えを強要した検察官を、元容疑者が非難するといったケースもあると、フランスの国際ニュース専門チャンネル「フランス24」は報じている。

 起訴されればほぼ必ず有罪になるという点も問題視されている。エコノミスト誌によれば、イギリスの有罪率は80%ほどだが、日本では99.9%といわれている。これは検察が起訴するかどうかの裁量権を持っているためだとフィナンシャル・タイムズ紙(FT)紙は述べ、検察側は勝てるケースしか起訴しないと指摘している。昇進のためには検察官は大きな有罪を取ることが必要だと同紙は解説。無罪判決のようなミスは許されず、勾留中に長時間の取り調べで自白を取ろうとするのもそのせいだとしている。

 フランス24のインタビューに対して元検察官の郷原信郎弁護士は、有罪率が極めて高いということは、日本ではほぼ検察官だけで容疑者の有罪・無罪を決めているということだ、と述べる。たとえ起訴が間違いであっても、裁判でそれを覆すことは非常に難しく、ほとんどの裁判官は無罪判決を出したがらない。これが冤罪を生むことにもつながると指摘している。

◆メディアの公開処刑か? 「容疑者=犯罪者」ではない
 立件するために自白や証言に大きく頼るものの、検察官はしばしばメディアに情報をリークする戦略を取り、大衆の意見を検察寄りに動かそうとするとフランス24は指摘。そのため正式に起訴される前に容疑者はメディアによる審判を受けるため、推定無罪の原則が果たして重んじられているのだろうかと疑問を呈している。

 FTも、メディアにリークすることにより、法的に不確かなケースでも勢いはついてしまうと述べる。弁護士の蒲野宏之氏は、そうでもしなければゴーン氏のように有名人物を起訴するための正当性を得るのは難しいと語っている。ゴーン氏逮捕以来、日本の新聞はゴーン氏のライフスタイルやふるまいにまつわる疑惑を数多く報じ、2006年のライブドア事件にも似たものがあると同紙は述べている。

◆信頼低下の検察 ゴーン氏の反撃はいかに?
 フランス24は、「特捜」の捜査官は、強欲な政治家や企業を裁くことで国民の信頼を得てきたとし、1970年代に田中角栄を、1990年代には金丸信を追い込んだことなどを紹介している。しかし、特捜が持つチェック体制のない裁量権と、有罪判決を引き出さねばならないプレッシャーが地位の乱用につながり不祥事も発覚。さらにそれを機に改革が行われたため、検察官がより起訴に慎重になり、大型事件での起訴を見送って国民の信頼を失ったと解説する。今回は人気回復のためゴーン氏を狙ったという意見もあるが、事件は単なる手の込んだ取締役会での反乱の一部かもしれず、ゴーン氏逮捕は特捜のフライングという見方もあるとしている。

 FTは、罪は立証されなければならず、そのうえ日本の司法は完璧主義だと述べる。ゴーン氏が起訴されれば(注:記事は起訴前のもの)、裁判でアグレッシブに戦える財力を持ったまれな容疑者になるとし、検察は厳しい戦いを抱え込むことになるとしている。

Text by 山川 真智子