800人の村で150年続くヨーロッパ最大のお見合い祭り 世界から6万人の男女

Chairego apc / Wikimedia Commons

 ヨーロッパ最大といわれる見合い祭りが人口たった800人ほどのアイルランドのクレア州リスドゥーンバーナ(Lisdoonvarna)で開催されている。元は農夫の結婚相手を見つけることが目的で約150年前から始まったといわれるリスドゥーンバーナ・マッチメーキング・フェスティバル。以前は炭鉱の村として栄えていたこの村だが炭鉱が閉鎖され若者は職を求めて都市部へ移動し、村の人口は下降線をたどって今日に至る。

 その村が、毎年8月末から9月末までの1ヶ月はまるで大都市のように蘇る。いまや世界でも有名になったこの祭りは、運命の出会いを求めて6万人を超える男女が集まるほど壮大なスケールになっている。誰もが楽しい時を過ごしリラックスしながらパートナーを見つけることができる国際的イベントは世界的にも稀だ。

◆老若男女、ゲイもストレートも一堂に会す
 村おこし的な行事として地域経済活性化を図るこのリスドゥーンバーナ・マッチメーキング・フェスティバルだが、ただの見合い祭りではない。この出会いの場はボーダレスで、高齢者からLGBTまで様々な人々が集いバラエティー溢れるテーマのイベントに参加できる。

 例えば、相乗り自転車スピードデート、ダンス、ライブなど出会い目的でなくても十分に楽しめる。アイルランド人のパートナーを探していなくとも、多国籍軍の参加者の中から運命の相手を見つけることができるチャンスがたくさんあるという。

 また、この祭りの発起人であるマッチメーカーのウィリー・ダリー氏に会いたくてやってくる人々も多い。ダリー氏は一族で3代目のマッチメーカーで、過去50年に3000カップルを生み出している。この祭りのジンクスであるダリー氏が持ち歩く160年ものの見合いノートに両手を乗せると6ヶ月以内に結婚すると言われており非常にファンタジックでもある(テレグラフ紙)。

◆村おこしのモデル?
 日本国内の見合いといえば、非常に形式ばったイメージが思い浮かぶ。ビールを飲み大笑いしながら見合いするなどは考えられないだろう。家柄、職業、趣味などの基本条件を仲介人もしくは立会人を元に交換し、本来の個性を見せる機会が少ない日本の見合い。カジュアルな婚活パーティーでさえ、パートナー探しに必死になり、その場を楽しむなどといった気分にはなれない。

 150年も続くリスドゥーンバーナ・マッチメーキング・フェスティバルでは街全体が見合い会場。そのため、参加者は大胆になり、突然その場でプロポーズされることもあるという。仮に自分の理想の相手が見つからなくても、イベントに参加するだけでも楽しい休日を過ごすことができることから、がっかりすることも少ない。独身者に夢を与えさらに過疎化した村の経済が一時でも復興する理想的な祭りはまさに村おこしのモデルとなっている。

Text by 安藤麻矢