韓国女性が「盗撮ポルノ」に抗議 1万8千人がデモに参加

Ryu Hyo-lim/Yonhap via AP

 7月7日、韓国の首都ソウルに数千人規模の女性らが集結し、同国政府に対して盗撮による画像や動画の拡散防止対策を強化するよう求めた。彼女たちは、女性が常に不安や苦痛を抱えて暮らしていると主張している。

 警察の発表によると、抗議デモに参加したのは約1万8,000名で、すべて女性だという。参加者は、女性に無断で画像もしくは動画を撮影し、インターネット上に投稿した男性犯罪者に対する捜査および罰則の強化を要求した。

 デモ参加者の大部分が野球帽やサングラス、そして外科医用マスクで顔を覆っていた。これはデモ主催者の指示によるものだ。主催者によると、女性は常に「トイレに小型カメラが隠されているのではないか」「地下鉄の駅ではスカートの中を動画撮影されるのではないか」など不安を抱えており、その環境に反対の声をあげるのが抗議活動の目的だという。しかし、今回の主催者は抗議運動を厳しく管理しており、また「生物学的に女性」でなければデモへの参加を禁止する、としたため、批判の声もあがっていた。

 デモ参加者の多くは赤いTシャツを身に着け、「怒れる女性が世界を変える」と書かれた看板を掲げた。2人の女性が自らステージ上で髪を剃り、参加者は賛同の声をあげた。

 抗議者の1人が髪を剃るのと同時に、もう1人が「違法動画撮影が根絶されるまで闘おう!」とマイクに向かって叫んだ。「男たちに告ぐ。私はあなたの性的欲求の対象ではありません! 私はあなたと同じく、一流の市民なのです!」

 韓国ではこの数年、小型カメラやスマートフォンを使って女性の服の下から性器や下着を撮影する盗撮犯罪者の対策に苦慮してきた。撮影された動画は、『ソラネット』などの違法ポルノサイトで広く拡散されている。2016年に警察によって閉鎖されるまで、サイトのユーザ数は100万人を超えていた。同様のサイトが今も稼働しており、正確な数は把握できていない。

 2004年以降、韓国政府はそういった犯罪防止のため、スマートフォンでの画像および動画撮影時には大きめのシャッター音が出るよう設定することを求めている。しかし、専用のアプリを使えば携帯電話のカメラのシャッター音はオフにすることが可能であり、また、カバンや靴、トイレの壁やドアに空いた小さな穴に忍ばせることのできる小型カメラも山ほどある。

 批判が高まる中、韓国の文在寅大統領は7月3日に隠しカメラを用いた犯罪に対する厳しい罰則を検討するよう官僚らに命じ、さらに加害者の行為を直ちに雇用主へ通告するという対策を徹底するよう求めた。

 文大統領は閣僚会議において、「加害者には、自らが被害者に与えた苦痛を超える苦痛を与えなければならない」と話した。

 韓国政府は50億ウォン(約5億円)の予算を組み、地方自治体にカメラ発見用器具を装備し、また公共の場や民間の建物にあるトイレに、撮影器具を発見する装置を設置する予定だ。また、小学校、中学校、高校まで捜査を拡大する計画もある。

 韓国の法律では、相手の同意を得ずに、プライバシーにかかわる性的な画像を作成した場合、5年以下の懲役、もしくは1,000万ウォン(約100万円)の罰金が科される。また、そういった画像を営利目的で配信した場合、7年以下の懲役または3,000万ウォン(約300万円)の罰金刑に処される。

 5月と6月にも盗撮画像がポルノ素材として拡散することに反対する女性の大規模なデモが開催されており、7月7日にソウルで開かれた集会は、それに続くものだ。

 この抗議運動は、5月に起きた事件に端を発したものである。この事件では、美大に勤める25歳の女性がヌードモデルの同僚男性を盗撮し、その画像をインターネットにアップロードして逮捕された。

 その際迅速な捜査が行われたことが、多くの女性の間で波紋を呼んだ。盗撮事件の被害者は主に女性だが、その場合、警察は真剣に捜査を行っていないのではないか、という疑問が生まれたのだ。抗議デモ参加者は、女性が被害者のケースでは「外国のサーバーを経由しているため、犯罪者やポルノサイトの追跡ができない」という理由で数えきれないほどの事件の捜査が打ち切られている、と指摘した。警察庁はこの件について、被害者が男性だからといって、捜査を通常よりも強化するよう命じたという事実はない、と否定した。

By KIM TONG-HYUNG, Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP