編み物でうつ病など改善か 英調査 医療費削減への期待も
編み物をすることでうつ病やアルツハイマー、慢性痛などさまざまな病状を改善することがわかりさらにリサーチが進められている。イギリスの慈善団体Knit for Peace UKが編み物参加者1,000人を対象に行った調査では、70%が編み物によって心身健康を改善されたとした結果を発表している。また、イギリスのジャーナル・オブ・オキュペーショナルヘルス では、編み物をした3,500 人のうちの81%がうつ病にかかっていても編み物をしている時間は幸せと感じたと報告している。ハーバード・メディカル・スクールのMind and Body Instituteの研究では、編み物は心拍数を1分平均11回減らしヨガのように落ち着きを促進させることがわかった。
Knit for Peace UKの調査結果が発表された際、アメリカやイギリスなどのさまざまなメディアから注目された編み物パワー。インデペンデント紙では、増大する国家医療負担を軽減するためにも編み物を治療法に取り入れるべきだとも述べている。これら報道の背景には薬に依存する現在の治療方法への疑問がうかがわれる。
◆増える精神疾患患者と医療負担増加のジレンマ
世界ではうつ病や心臓病、慢性痛などさまざまな慢性疾患で医療機関にかかる人口が増え続けている。世界保健機構が今年3月に発表した調査結果によると、うつ病の患者数は2015年時点で約3億2,200万人にのぼり、10年前と比較して18%増加している。
精神疾患や慢性疾患などは治療が長期化することも多く公的医療資金への負担ともなっている。イギリスでは、国民保険サービスの2017年次報告によると、認知症などの医療支出は260億ポンド(約3兆8,000億円)、抗うつ剤の購入額は3億ポンド(約440億円)にも上っているほどだ。
◆薬以外の治療法が注目される理由はなぜか
欧米諸国では心身の総合バランスに焦点をあてた非薬物療法の研究が盛んに行われている。その一つが編み物である。その他、ヨガや気功などは一般的に認知度が高い。
いままでも非薬物療法の学術的研究は行われ、治療の一環として取り入れている医療機関もある。それは、従来型の医師の指示に患者が従うといった受け身型の治療が見直され、自己治療の重要性が認知されてきている証とも言える。
◆うつ病の治療には薬では限界か?
うつ病の主な治療方法は抗うつ剤の服用とカウンセリングである。しかしながら依然として薬のみでうつ病が完治すると考えている患者は少なくないが、事実は違う。抗うつ剤を服用した患者数の3分の1にしか効果がないとも言われ、抗うつ剤の有効性はこれまでも激しく議論されている。実際に抗うつ薬は1950年代に誕生したが、うつを引き起こす脳のメカニズムはいまだ解明されていない。
脳をはじめとし人間の体にはまだ未知が多く西洋医学の歴史も浅い。薬や手術といった伝統的な治療法に加え医療機関でも編み物などの非薬物療法を導入し効果を実証することで 治療領域が広がってゆく。