韓国、塾・習い事ブームが加熱 月額費用が過去最高 「公教育の失敗」と批判も
私教育ブームが過熱する韓国。有名大学を卒業して大企業や公務員に就職するのが一流のステータスだ。子どもは塾や予備校に通うのが当たり前で、ピアノやテコンドーなどの習い事も欠かさない。そのため子ども1人当たりの私教育費は非常に高い。韓国統計庁は今年3月、小・中・高校の子ども1人当たりに必要な教育費は月額27万1000ウォン(約2万7500円)で過去最高を更新したと発表した。
ところが発表された私教育費に韓国国民は「本当に2万7000ウォン? あまりに安すぎる」と不満を漏らしているという。一体、韓国の私教育費はいくら必要なのだろうか。
◆高校卒業までにかかる塾代平均650万円
韓国文部科学省と統計庁が発表した「2017年小中私教育費調査」では、塾や習い事をさせていないケースも計算に含まれているため、実際とはかけ離れた結果になっているという。私教育を受けている子どもだけに絞れば、月平均の私教育費は38万4000ウォン(約3万9000円)となる。支出金額別に見れば50万ウォン以上(約5万円)とする割合が32%となった。ソウル在住で中学生1人、小学生2人の子を持つキムさん(44歳)の場合、数学と英語の2科目を習わせるだけで月65万ウォン(約6万6000円)を支払っているという(ハンギョレ)。
新韓銀行の調査レポートによれば、子供1人が高校卒業するまでにかかる総教育費用は平均8552万ウォン(約868万円)で、このうち塾や習い事などの私教育費は6427万ウォン(約653万円)となる。韓国では子どもの私教育費を負担するために「親の腰が曲がる」と言われている。高騰する私教育費について韓国メディアの毎日経済は「私教育ブームは公教育の失敗が最大の原因である」と指摘した。過度な学歴中心主義や複雑な入試システムも一因となっているようだ。
◆貧しい家庭の子の教育費、裕福な家庭の5分の1
もちろんすべての家庭が高額な私教育費を捻出できるわけではない。月給700万ウォン(71万円)以上の世帯と200万ウォン(20万円)未満世帯の私教育費の格差は約5倍に広がっているのだ。私教育にお金をつぎ込んだ結果、老後資金が足りなくなったという家庭も少なくない。各紙は「“貧しい者はますます貧しく、富める者はますます富む”現象が深刻化している」と警鐘を鳴らす。
◆出生率低下の原因にも
私教育費の高騰はさまざまな弊害を生んでいる。一部メディアは、最近の韓国の若い夫婦は高額な教育費を恐れて子どもを持つことを避けていると指摘した。実際、最新の出生率調査では過去最低となる1.05を記録し世界最低となった。
学生数は昨年度より15万人ほど減少したにもかかわらず、私教育費は5年連続で増加している。公教育と私教育のアンバランスが生んだ教育費格差社会。韓国政府には公教育の質と量の改善が求められている。