日本の「報道自由度ランク」は低すぎる? 雑な「日本地図」は残念……

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 国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」は25日、世界180の国・地域における報道の自由度を評価した「報道の自由度ランキング」を発表した。これは毎年発表されているもので、日本は今年、昨年の72位から5つ順位を上げた67位と評価された。この順位は先進国の中でも特に低い。

◆67位、日本の低評価の理由は?
 このランキングは、「メディアの独立」や「メディア環境・自己検閲」といった基準に基づいて各国の評価を行うもの。日本は67位とされているが、この低い順位には違和感を持つ人も多いだろう。なぜ日本はこの順位となったのだろうか。

 詳細な評価については明らかにされていないが、日本に関する総評の中では、「(安倍首相の)メディアに対する不信感についてジャーナリストたちが不満を持っている」「記者クラブの制度によってフリーランスや外国の記者が差別されている」「SNS上で、政権に対して批判的なジャーナリストや愛国的でないテーマを扱うジャーナリストが攻撃されている」ことが指摘されている。

 なお、昨年より評価が上がった理由は、安倍政権のメディアに対する圧力が弱まったからだと説明されている

◆公式ページの日本地図が……
 この「報道の自由度ランキング」だが、米ワシントン・ポスト紙や英ガーディアン紙を含む各国の大手メディアで取り上げられており、世界で信頼に足るソースとみなされている。しかし、公式ページの国別の総評に添えられている各国の地図は驚くほどに雑な仕上がりとなっている。実施している「国境なき記者団」は元々フランスのジャーナリストによって設立された組織だということだが、ジャーナリストが持つべき情報の正確性に対する意識が感じられない。

 問題の日本地図だが、下図の左側が、「国境なき記者団」が作成したと思われる日本地図だ。その右側に掲載した外務省作成の日本地図と比べると一目瞭然だが、「国境なき記者団」の地図では、日本として表示されているのが北海道、本州、四国、九州の4つだけとなっている。

(左)国境なき記者団HPの日本地図、(右)外務省HPの日本地図

 この地図には沖縄が含まれていない上に、表示される都市名が「大阪(Osaka)」と「札幌(Sapporo)」の2つのみであるため、まるでいずれかが日本の首都のように見える。さらに、日本が領有権を主張している北方領土、竹島、尖閣諸島も日本の範囲の中に含まれていない。

 何らかの政治的な主張か? という風にも見えてしまうが、他の国も見てみると特に深い意味はないようだ。日本と同じく多数の島で構成されるフィリピンも同様の扱いを受けている。つまり、国の範囲を赤色で示す手間をなるべく少なくしようとした結果ということだろう。

 ただやはり、世界各国のメディアに引用される情報ソースであり、多くの人が目にするものであるため、正確な情報を掲載してほしいと感じた。報道と関わる機関であるならなおさらだ。

◆ランキングの信頼性に疑問の声も
 今回のランキングで日本は67位だったが、これは先進国の中でも特に低い。他の先進国の多くは50位以内にランクインしており、日本と同じ60位台にはハイチやグルジア、ニジェールといった国が並ぶ。このため、このランキングの信頼性に疑問を呈す声もある。

 例えば、2017年に「国境なき記者団」のクリストフ・ドロワール事務局長が来日して記者会見を行った際には、「安倍首相に対する偏見があるのではないか」「信頼できない」との激しい意見もぶつけられた。

 ドロワール事務局長は「安倍首相に対する偏見があるのではないか」との質問に対し、ランキングは安倍首相に対する評価ではなく、オープンな基準に基づくものだと答えている。「国境なき記者団」によると、このランキングは、87項目の質問を専門家(メディア関係者、法律家、社会学者)に対して行い、得られた回答をジャーナリストに対する暴力行為などのデータと併せて評価したものだという。

 報道によると、2016年のランキングの調査では回答者は20人だったとされていて、あまり多くはない。専門家の回答に基づくという形式を取っていることから、回答者の主観に左右される方式だという批判もある。

 ただ、日本の評価が低い背景には、重視されている点が日本の大手メディアや国民の視点とは若干違うという事情もあるのかもしれない。総評でも、大手メディアが情報を独占できる記者クラブの制度によってフリーランスや外国人の記者の情報収集が制限されているという問題が指摘されているが、この点に関し、国境なき記者団の創設者であるロベール・メナール氏はかなり厳しく考えているようだ。同氏はフランス・ニュースダイジェストが2008年に行ったインタビューで、「先進国であっても、取材するジャーナリストが限定されている以上、それは検閲と同じこと。つまり、日本国外のジャーナリストにしてみれば記者クラブにアクセス出来ない以上、日本も北朝鮮も情報検閲の上では同等と見なされる」と語ったという。

 ランキングに対する批判はあるが、上記の点も考えると、筆者としてはランキング自体を批判する気はない。ただ、明らかな間違いである日本の地図に関しては、今後改善されることを期待している。

Text by 後藤万里