燃え上がる韓国のMee Too 政府を動かし、男性は女性を避けるように
韓国の忠清南道知事、アン・ヒジョン氏の秘書が、同知事にレイプされていたとテレビ番組で告白した。アン氏は非を認め知事を辞任すると発表し、韓国では衝撃的に受け止められている。実は最近になり、権威者や著名人にセクハラを受けたという女性が表に出てきており、男性優位社会韓国に#MeeTooムーブメントの嵐が吹き荒れている。
◆秘書が衝撃のセクハラ告発。政界のホープ撃沈
APによれば、アン・ヒジョン氏は、保守的な韓国において、性差別や人権問題に関しては先頭に立つ進歩派で、昨年の大統領選の予備選では文在寅(ムン・ジェイン)大統領に次いで高い支持を受けた人物だ。
ところが、アン氏の秘書の女性がテレビの生番組に出演し、アン氏に6月以来数回にわたってレイプされていたと告白した。女性は大統領選の選挙運動で働いた後、秘書に登用され、海外公務にも同行していたという。女性の告白後、アン氏の事務所は2人の関係は同意に基づくものだったと説明したが、女性は権力を持つアン氏には逆らえなかったと訴えた。結局アン氏は「すべて自分のせい」とフェイスブック上でコメントし、知事職を辞し政界から引退すると発表した(AP)。
実は、韓国ではセクハラを公にする女性が増えている。英テレグラフ紙によれば、きっかけは1月に地方の女性検事が、幹部からセクハラを受けていたと声を上げたことだという。以来、芸術、エンターテイメント、果ては宗教界に至るまでセクハラスキャンダルが露呈し、#MeeTooムーブメントに火が付いた。ついに政界にまで波及し、ホープ、アン氏の辞職につながったが、3ヶ月後の重要な地方選を前にして、この事件は政界における#MeeTooムーブメントのほんの始まりに過ぎないという見方もあるという。
◆弱者である女性の男性社会への挑戦。政府も腰を上げた
2017年の世界経済フォーラムによれば、韓国は男女同権で見ると、世界で118位だ。また、男女の賃金格差は、OECD(経済協力開発機構)諸国においては最悪のレベルだという。女性に対する暴力も広く見られ、最近の調査では、ソウルにおいては88.5%の女性が、恋愛関係において何らかの暴力を受けた経験があると回答している(ウェブ誌クオーツ)。このような事情から見ても、#MeeTooが支持される下地はすでにでき上がっていたようだ。
ムーブメントの広がりを受け、韓国女性家族部長官のチョン・ヒョウベク長官は、国際女性デーの記者会見で、韓国社会に長く深く根付いた性差別による力関係や、性別による不平等に対する女性の怒りが、ついに爆発したのが#MeeTooムーブメントだと述べた。そして、男性中心社会への問題提起になったと肯定的に評価した。すでに文大統領も#MeeTooへの支持を表明しており、韓国政府は性的暴行に対する法律を強化し、セクハラを減らすための対策に取り組む考えを明らかにしている(ロイター)。
◆新ルール適応?あまりのパワーに男性萎縮
一方英テレグラフ紙によれば、盛り上がる#MeeTooの陰で、セクハラだと糾弾されることを恐れた男性たちが、職場の女性を避けたり、男性上司や同僚が、大切な交流の機会である飲み会に、女性を招かなかったりするという事態が発生しているという。女性とディナーに行かない、または酒が出されるイベントには妻同伴でしか行かないという、米副大統領のポリシーである「ペンス・ルール」の対象に、職場の女性たちがなっているようだという朝鮮日報の意見も同紙は紹介している。
同紙は、女性を避けることが男性の一般的なリアクションかどうかは分からないとしながらも、ネット上には「上司が急に女子社員に無口になった」、「男性上司との出張が急にキャンセルされた」などのコメントが上がっていると述べている。
フェミニズムの盛り上がりと、権力への挑戦を予感させる韓国の#MeeTooムーブメントだが、一部の男性には恐怖感も植え付けてしまったようだ。とはいえ、あまり盛り上がらなかった日本とは対照的に、世論や政府を動かしており、今後のムーブメントの行方が注目される。