「超感覚」はトレーニングで磨くことができるのか?
著:Harriet Dempsey-Jones(オックスフォード大学 Postdoctoral Researcher in Cognitive Neurosciences)
もしも自分の背後で誰かがささやいた言葉を聞き取ることができたら、どんなにいいだろう?あるいは、通りの向こうにあるバスの時刻表が読めたら?我々の知覚力、つまり五感は人それぞれ大きく異なる。しかし、今ある知覚をありのまま受け入れなければならないのだろうか?それとも、感覚を磨くために実際に何かできるのだろうか?
知覚力の差は、五感の中でも特に重要度の高い聴覚と視覚ではっきりとあらわれる。しかし、それ以外の知覚が優れている人も中にはいる。たとえば、ごくまれに「スーパーテイスター」と呼ばれる、さまざまな「甘み」や「苦味」を敏感に感じ分けられる味覚の持ち主もいる(舌の先にある味覚受容体の数の多さと関連性がある)。ただ、スーパーテイスターだから良い、というわけではなく、アルコールやトウガラシのような刺激物による口内刺激にも敏感になってしまう。
女性は男性よりも、触覚が優れていることがわかっている。興味深いのは、これは性別が違うから、というよりも、女性の指のほうが細くて小ぶりなためだという。触覚の受容体が狭いところで緊密にまとまっているため、触覚が敏感である可能性があるのだ。つまり、男性でも、指のサイズが女性と同じであれば、触覚も女性と同程度になるということだ。
◆知覚学習
我々の知覚は、体内の感覚受容器により大きく制限されている。しかし、それで終わりではない。我々の知覚というのは、予想以上に可鍛性がある。つまり、鍛えれば変化する、ということだ。「知覚学習」という科学分野は、知覚の理解、そして強化に役立つものだ。
この研究により、スポーツや言語などのスキルと同様に、トレーニングによって視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を鍛えることができることがわかる。一般的な知覚トレーニングでは、訓練生に様々な難易度の知覚刺激が与えられる。触覚を例に挙げると、訓練生がフィンガパッドに触れたところに、振動を加える。周波数をランダムに変化させ(振動の速さを変化させ)、知覚能力を試すのだ。
研修生は通常、2種の刺激レベルが同一か否かを判断しなければならない。一般的には、まずは簡単な比較(刺激の強弱レベルが大きく異なるもの同士)からはじまり、徐々に難易度を上げていく。その回答の正誤についてフィードバックを受けることで、自分が見て、感じるものと、実際の刺激の特性をマッチングさせ、知覚学習を大幅に強化することができるのだ。
これまで長い間、知覚力向上には、この明確なトレーニングを行うしかないと考えられてきた。しかし、能動的に行動することなく、あるいは自覚することもなく知覚を向上させることもできる。ある驚くべき事例では、被験者に特定の視覚刺激を与え、脳活動パターンマッチングデータを生成するという、脳スキャナを利用したトレーニングを行った。科学者チームは被験者に、パターン生成がどれだけうまくいったか、をフィードバックする。これが、「ニューロフィードバック」と呼ばれるプロセスだ。
トレーニング中、被験者には「見えた」さまざまな視覚刺激を特定してもらう。被験者は物理的には「見て」いないにもかかわらず、結果としては、トレーニングで与えられた刺激の方をより速く正確に報告できることがわかった。これがスタートだ。
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