「政府への信頼」急落の米国、84%信頼でトップの中国 エデルマン調査

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◆フェイクニュースに起因か
 不信の原因としてアトランティック誌はフェイクニュースの蔓延を指摘している。何が正しい報道で、何がフェイクニュースなのかという見極めは非常に難しい。正しい情報が民主主義の生命線だが、それが揺らいだことで合理的な議論が行われず、政治観の分極化が進んでいる。これが政府への不信につながっているとの分析だ。

 また、現政権の支持者であっても、政府を「信頼している」と回答するとは限らないようだ。これは設問中の「政府」という用語に問題がある。ワシントン・ポスト紙ではある国際政治学の教授の指摘として、言葉の解釈の問題を挙げる。説明によると、反トランプ派は、トランプ政権を「政府」だと解釈する。一方でトランプ支持者は、官僚や政権に対抗する闇の勢力と言われる「ディープ・ステート」を「政府」と解釈する。(ディープ・ステートの一例としては、昨年、FBIがトランプ政権の失墜を図ったという疑惑が広がっていた。)

 こうした「政府」という用語の捉え方の違いにより、現政権の指示・不支持にかかわらず、「政府」への不信を示す状況が生まれている可能性がる。同じ単語を異なる意味で捉える傾向は政治観の分極化によるものだとのことで、元を正せばフェイクニュースよる分極化が影響していると捉えることができそうだ。

◆中国では
 アメリカと対照的に、中国では全体評価が7ポイント向上し、74%で1位に躍進した(政府への信頼度は84%で同じく1位)。アトランティック誌では、生活の質の向上が理由だとする見方を伝えている。また、特に世界に混乱が生じている状況では、中央集権的な政府に信頼が集まりやすいと解説する。

 ただし、USニューズ&ワールド・レポート誌では、コラムニストのジェームス・ワレン氏が別の原因を主張する。経済の進展も一定の理由となっている可能性を認めた上で、共産党による言論統制が大きく影響しているのではないかとの見解だ。政府への不満を述べることに恐怖感が伴う状況では、調査結果の信頼性にも疑問が残るとしている。

 なお、気になる日本の信頼度は37%で、26ヶ国中16ヶ国が信頼度を伸ばす中、前年から動きがない結果となった。USニューズ&ワールド・レポート誌は、過去に先進国で互いを信頼し途上国では家族しか信頼しない傾向があったが、2008年の経済危機を機に状況が逆転してしまったと述べている。経済の回復により好転するかは不透明だとの見解だ。アメリカの、そして日本の政治不信は続くのだろうか。

Text by 青葉やまと