奇妙な新種の恐竜 アヒル、ワニ、ダチョウ、ハクチョウの特徴

Lukas Panzarin via AP

 アヒルのようなくちばしにワニのような歯、ハクチョウのような首に鋭くとがった鉤爪――絵本作家ドクター・スースの絵本から飛び出したような新種の恐竜がこのほど発見された。

 この恐竜にはペンギンのような翼があり、ダチョウのように歩くうえに泳ぐこともできた。二足歩行の肉食恐竜に水泳能力が確認されたのは今回が初めてだ。

 体高約18インチ(45センチメートル)と小型なこの恐竜は、7500万年前に現在のモンゴルに生息していた。体を丸めた状態の完全な骨の化石が砂岩の中から見つかった。

「とても変わった動物です」と、チェコのパラツキー大学で古生物学を研究しているデニス・ヴォーテン氏は話す。「さまざまな動物群のパーツがこの小さな体に集まっています」。

 昨年12月に科学ジャーナル『ネイチャー』で発表された研究で、ヴォーテン氏と共同執筆陣はこの恐竜を、ポーランドの古生物学者ハルシュカ・オスモルスカ氏(故人)にちなんで“ハルシュカラプトル・エスクイリエイ”(Halszkaraptor escuilliei: 略称“ハルシュカ”)と命名した。

 米ミネソタ州セントポールのマカレスター大学助教授で古生物学者のクリスティ・カリー・ロジャーズ氏はこの研究に参加していないが、「すこぶる奇妙なキメラです。首はハクチョウのようで体は恐竜のよう、口中には小さな歯がびっしりと生えていて、泳ぐのに適した手足をしています」とこの恐竜を評している。

 さまざまな動物の身体的特徴を兼ね備えているおかげで、地上を走って狩りをしたり水中を泳いで魚を捕ったりできたと、共同執筆者で古生物学者のポール・タフォロー氏は話す。同氏が所属する仏グルノーブルの大型X線放射光実験施設ESRF(European Synchrotron Radiation Facility: 欧州シンクロトロン放射光研究所)で、さまざまな試験がこの化石に施された。

 伊ボローニャのカペッリーニ地質学博物館で古生物学を研究している主執筆者のアンドレア・カウ氏は当初、この化石が本物かどうか甚だ疑問だったという。その外見のためでもあったし、骨の化石が見つかった砂岩がモンゴル国外へ持ち出され、個人収集家の手に渡っていたためでもあった。

「『これは本物の、自然のままの骨なのか? 人工の骨なのか? キメラなのか? これが偽物だとして、どうやって証明すればいい?』と自問自答しました」とEメールの中で同氏は告白する。「このような奇妙な化石を調査するにあたっては、この化石は本物だと仮定するところから始めるより偽物だと仮定する方が最適な方法だったのです」

 そこで、研究者たちはシンクロトロン放射光を用いて化石の3次元画像を作成、この生物が実際に単体の動物であり、複数の動物を繋ぎ合わせて作られた偽物ではないことが証明された。例を挙げると、岩に埋もれている片腕は可視化した左腕と完全に一致し、化石に刻まれた成長を示す線はその骨格と一致した。

 この生物は絵本作家のドクター・スースとは無関係だったが、学者のドクター・の祝福を受けた。

 スミソニアン研究所(Smithsonian Institution)で古生物学を研究しているハンス・スーズ氏はこの研究に参加していないが、「恐竜の驚くべき多様性を改めて示すものだ」と賛辞を贈っている。

BY SETH BORENSTEIN, Washington (AP)
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP