韓国で問題になるイスラム教徒差別 ヒジャブ剥ぎ取りも 声を上げる人権団体

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 K-POP(ケイ・ポップ)人気の影響で韓国を訪れるイスラム圏からの旅行者が増加している。韓国観光公社によれば過去5年間で約50万人増加し、2017年は100万人突破が確実視されている。しかし、訪韓ムスリムに対する目を疑うような行為が韓国社会で問題となっている。

◆イスラム女性のヒジャブを突然剥ぎ取る
 今月5日、韓国日報は、地下鉄で電車を待っていたイスラム女性のヒジャブ(頭に巻くスカーフのようなもの)を、韓国人の高齢者が無理やり剥ぎ取るという事件が起こったと報じた。女性はあまりの突然のことに驚き、その場を走って逃げ出したとされる。

 ヒジャブはイスラム教を信仰する女性にとって身を守るための道具の一つであり、外出するときは必ず身に付けなければならない。これを強制的に剥ぎ取る行為は極めて差別的な行為にあたるとされる。女性によっては強姦されたのと同様の辱めを受けたと感じるという。

 その高齢者がヒジャブの宗教的意味を知っていたかどうかは定かではない。しかし、ムスリムに対する差別的行為はイスラムフォビア(イスラム教徒への嫌悪)として、今世界的に頻発している。

 また、旅行で韓国を訪れたインドネシアのイスラム教徒も悲しい体験をした。とあるレストランで豚肉を食べられないことを告げたにもかかわらず、出された料理に豚肉入りの調味料が使用されたことが発覚したのだ。店員らは反省するどころか、面白がっていたという。イスラム教では豚はハラム=禁じられたものとして食べる文化がない。ムスリム旅行者が増加している日本では、ハラル料理を提供するホテルやレストランが増えている。

 このように、韓国ではイスラム教徒に対して理解が足りない行為がメディアでたびたび取り上げられ、問題となっている。SNSなどでは「そもそも豚肉を食べる国に来るのが悪い」「外国に来るならその国の習慣に合わせるべきだ」との否定的な意見が多数見受けられた。2016年初めにはムスリム専用の食品を製造するハラル工場の建設が、キリスト教徒を中心とした市民団体の反発により撤回に追い込まれたこともあった。

◆グローバリズムに直面している韓国
 韓国社会の他宗教に不寛容な態度に関して、ハンギョレ21は8月3日付の記事で「これでは真のグローバル国家にはなれない」と厳しく指摘する。

「韓国社会は輸出文化をお金を稼いでくる商品としか見ておらず、(本来の)世界の人々とコミュニケーションするツールであるという認識が不足している。他の文化を無視することは差別につながるのだと自覚しなければならない」

 外国人差別をめぐっては、韓国で人種差別禁止法制定の動きが活発化している。もとは2002年に当時の盧武鉉(ノムヒョン)政権時に掲げられた公約だったが、保守系団体の反発に遭い、幾度となく撤回に追い込まれてきた。しかし、度重なる外国人差別事件を受け、カトリックや円仏教などで構成される移住人権協議会は、今月13日の記者会見で「人種差別行為に対する明確な基準と処罰根拠を定めなければならない」と述べ、差別禁止法の必要性を強調した。

 日本同様、単一文化主義が根強い韓国。国際的に自国第一主義の風潮が強まる中、グローバリズムと真剣に向き合おうとしている。

Text by 古久澤直樹