フランス、学校での携帯使用を全面禁止に 世界的には禁止撤回の国も

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 来年9月より、フランスの学校内で6才から15才の生徒による携帯電話の使用が禁止されることになった。これはマクロン大統領による選挙公約でもあり、子供の携帯電話依存を防止するためのものだが、広くスマートフォンが普及した今、この措置の是非が問われている。子供の学校での携帯電話使用には様々な考え方があり、国により対応が分かれている。

◆禁止は非現実的。物理的な障害があった
 現在のフランスの法律では、生徒が教室内で携帯電話を使うことは禁じられている。しかし来年9月に始まる新学期からは、生徒が学校に携帯を持参することはできるが、休み時間や昼食時なども含め、校内での使用は一切できなくなるという(ABC)。フランスのブランケール教育相は、「時には教育的な理由、緊急の場合に携帯を使う必要もあるが、何らかのコントロールがなされるべきだ」としており、今回の措置は「家庭に対する公衆衛生上のメッセージ」であると述べている(ガーディアン紙)。

 ABCによれば、2015年のLondon school of Economicsの研究では、携帯電話禁止で、生徒のテストの得点が7%上がったという結果が出ている。しかし、今のところこの規制が実行できるかについては、多くの人々が懐疑的だ。すでに、フランスの10代の子供達の10人に8人以上がスマートフォンを所有しているという現実から、学校でのチェック体制をどのようにするかという問題が指摘されている。教育相は学校に携帯保管用のロッカーを設置すべきとしているが、多くの学校にはスペースがない。フランスの校長組合の副書記長は、「学校全体を巨大ロッカーにする気か? 5300校の公立校にそれぞれ500人の生徒がいるとして、ざっと300万個のロッカーが必要になる」と述べ、現実的でないとする。また保護者側からは、学校が保管するのなら紛失、取り違えなどの責任は取ってくれるのか、といった声も上がっており、実現は難しそうだ(ガーディアン紙)。

◆持ち込みの是非。国によって対応は異なる
 イースタン・デイリー・プレス紙によれば、イギリスのノーフォーク州にあるリーパム・ハイスクールでは、以前は休憩時間の携帯電話使用は認めていたが、今年9月より終日携帯はカバンの中に入れておくという規則に変更した。教室で使用した場合は没収、または保護者が回収に来ることになっている。今のところ保護者からの反応も上々で、生徒のほうも「なしでも思ったほど悪くない」、「携帯を見ないで友達と話すようになった」と述べ、順応しつつあるようだ。イギリスでは33%の学校が、携帯使用を禁止しているとのことだ(The Local

 一方、携帯電話の学校持ち込みが禁止されていたニューヨーク市の公立校では、2015年から方針が変更され、校長がルールを決めるか、学校には持ち込んでも使用しないというデフォルトルールを採用するかのどちらかとなっている。携帯電話の持ち込み禁止により、親と子供が連絡を取れないという問題があり、貧しい地区のほうが金属探知機による取り締まりなどより厳しい対応が取られたため不平等だという指摘もあったという。また、学校の近くで携帯預かり業者が出現し、子供たちがお金を払って携帯を預けて登校するという問題も生じていた。一年間預けるだけで180ドル(約2万円)を費やした家庭もあったということだ(ロイター)。

◆イタリアは寛容?日本ではアイデアグッズも
 イタリアでも持ち込み禁止を撤回し、さらに教室での携帯電話使用も可能にすると、昨年のThe Localの記事が伝えている。イタリア政府は、全学校にWi-Fiや超高速ブロードバンドを導入し、デジタルテクノロジーを教えられる教師の育成を進める計画だという。教室でのリーディングや宿題にまで、スマートフォンやタブレットを利用する子供が増えるのを期待している。また、学習障害のある子供たちにも大きな恩恵をもたらすと見ている。

 ちなみに日本では、「スマホ預かりバッグ」なるものが登場している。スマートフォンの持ち込みを禁止する学校もあるが、非常時に必要となるため持ってくるなというわけにもいかない。そこで子供たちの電話を名札付きのポケットが付いたバッグに入れてクラスごとに預かっておけるように、この商品が開発されたそうだ(日テレNEWS24)。場所を取らないだけに、フランスでも需要があるかもしれない。

Text by 山川 真智子