日本のリサイクル制度、英誌が成功例として紹介 使い捨てから循環型社会へ

Timothy Takemoto / flickr

 欧米諸国の人々と比べて、謙虚で何かと自国を卑下しがちな日本人だが、世界が驚くような素晴らしいシステムが国内で確立してきているかも知れない。そのシステムとは、リサイクルによるゼロ・ウェイストだ。1990年代後半から2000年代頭にかけて次々と作られた、一連のリサイクルの義務付けに関する法律のもと、日本は世界の称賛に値する再資源化に向けて少しずつ歩き出している。

◆リサイクル率は世界トップクラス!
 エコノミスト誌は「日本では、家電製品を捨てることは違法」と題したビデオを自社Twitterにアップし、日本のリサイクル事情を説明した。ビデオ内の説明によれば、「日本の鉄のリサイクル率は98%」であるという。天然資源が乏しい島国で貴重な資源はきちんとリサイクルするという姿勢に、多くの称賛のコメントが付いている。鉄だけでなく、日本の資源ごみリサイクル率は押しなべて高い。各リサイクル協議会によれば、スチール缶リサイクル率は90%以上、ペットボトルのリサイクル率も約86%以上となっている。

◆不名誉な世界トップクラスも……
 リサイクル率が非常に高いことは素晴らしいことだが、残念ながら、日本はゴミの排出量も非常に多い。環境省がまとめた資料によれば、全国のごみ排出量は4,398 万トンで、東京ドーム約118杯分(平成27年度)。一人一日当たりのゴミ排出量は939グラムとのことだ。前年比0.8%減だというが、まだまだ世界トップクラスである。

 しかし、その不名誉なごみ排出量に一石を投じているのが、驚きと共に報道され、観光地化しつつさえある徳島県上勝町だ。上勝町は「ゼロ・ウェイスト宣言」を行ない、2020年までにゴミをゼロにすることを決意した。この町のリサイクルの様子を取り上げたAP通信は、町を訪れた22歳の女子大生、ハオ・エアンさんの声を紹介している。カンボジア出身のエアンさんは、「カンボジアの廃棄物問題は、経済発展とともに深刻化している。私たちは(上勝市の)リードに従うべきだと思う」と述べる。カンボジアを含めた東南アジア、中国、インドなど、ここ最近の経済発展が目覚ましい国々は、ゴミ問題や環境問題をすでに抱えており、これから先も問題は大きくなる勢いだ。

◆「使い捨て型社会」から「循環型社会」に
 そのゴミ問題について、前述の上勝市では草の根レベルでごみを出さない売り方をしている商店がある。パスタや調味料、シャンプーなども量り売りをして、パッケージなどの余分なごみを出来るだけ出さないように配慮した店だ。

 現在、“再生紙を使用しています”という謳い文句をよく見るが、もとを質せば、再生紙を使用しているその紙こそが、必要のない包装であるかも知れない。そのような目で見ると、私たちの周りにはごみを増やす原因が非常に多く存在する。

 商品が美しくパッケージに包まれていたり、使い捨てで便利だったりするのは、お客様に対する思いやりの心、日本的な表現では「おもてなし」の精神からくるのであろう。しかし地球に優しい循環型社会に移行していくことは、今を生きる私たちの責務であり、次の世代に対して最大の思いやりの心を伝える行為なのではないだろうか。

Text by 西尾裕美