日本人の腎臓の弱さ、妊婦の「スリムさ」も原因か 日豪研究
高血圧に悩む日本人は多い。最新の研究で、その原因が我々特有の腎臓のつくりにあることがわかってきた。腎臓には塩分などの濾過の役割を担う「ネフロン」という組織があるが、日本人はこの数が少ない傾向にあるという。この研究は国内でも伝えられているが、海外報道の論旨はやや異なる。日本人が小さな腎臓を生まれ持つ原因として、妊娠中の厳しい体重コントロールが原因であると広く報道されている。
◆世界的な長寿国日本 慢性の腎臓病は世界2位
健康と長生きのイメージのある日本人だが、腎臓病に悩んでいるという事実は海外で驚きをもって報じられている。クォーツ誌によると、日本人の8人に1人は慢性の腎臓病を患っており、これは世界で2番目に多い水準だ。
日豪などのチームがともに行った今回の研究では、腎臓内のネフロンの数が、国や健康状態によって異なることが判明した。欧米人の平均は90万だが、日本人はそのおよそ3分の2の64万に留まる(クォーツ誌)。また、高血圧患者と慢性の腎臓病患者はさらに低い値を示すことから、ネフロンと高血圧の関係が明らかになった。
サイエンス・アラート誌(10月5日)によると、腎臓には血中の塩分をろ過するほか、タンパク質分解酵素の一種であるレニンの量をコントロールする働きがある。レニンは高血圧を抑制する働きがあるため、腎臓が機能不全に陥ると、結果として血圧も上昇してしまう。同誌の記事は「ほとんどの日本人は生まれつき腎臓に決定的な違いがある」と題している。健康的な日本人像と違った意外な一面と捉えているようだ。
◆妊娠中の体重コントロールに海外は衝撃
これらの研究成果は国内でも朝日新聞や毎日新聞などが報じているが、海外誌の着眼点はユニークだ。はじめに国内の報道を確認すると、毎日新聞では生活習慣に注意が必要なことや、医療費が膨らんでいることなどを指摘している。結果を中心に据えた報道であり、原因には踏み込んでいないのが特徴的だ。朝日新聞でも、日本人の腎機能の弱さは体格の小ささなどに由来するなど、原因には軽く触れる程度に留まる。
一方、海外では原因を中心に据えた報道が目立つ。クォーツ誌(10月6日)の記事は「細身であり続けたいという日本の妊婦の願望が、赤ちゃんの腎臓に広範囲な影響を及ぼす」との表題を冠する。これは、研究論文の共同執筆者である日本人博士の見解に基づくものだ。妊婦がスタイルを維持したいと願うため、赤ちゃんの体重が減少傾向にあると同博士は見ている。結果、腎臓が小さく、含まれるネフロンの数も減少するようだ。他にもネクスト・シャーク誌やサイエンス・アラート誌などが同様の観点でこの研究結果を取り上げている。
◆妊婦の意識よりも、医師の指導が原因とも
赤ちゃんの体重減少に関しては、日本の医師の指導にも原因があるかもしれない。ネクスト・シャーク誌(10月9日)は「しかし、このような傾向は女性のプライドだけが引き起こしているとは限らない」と強調する。他の先進国に比べ、日本の妊婦に課される体重コントロールは厳しいようだ。赤ちゃんが小さい方が出産がスムーズとの考え方が根底にあると研究チームは述べている。
クォーツ誌も同様に「日本の医師らが薦める体重増加量の制限値は、日本国外の女性にとってしばしば衝撃である」と指摘する。一例としてアメリカでは11〜16kgの増加量が推奨されており、7〜8kgという日本の推奨値とは大きな開きがある。こうしたことから、過去30年で新生児の平均体重は3kgにまで低下した。論文執筆者の博士は、妊婦の体重増加を以前よりも許容すべきだと訴えているとのことだ。
体重を抑制すれば出産時のリスク低減に有益だが、ネフロンの数は生まれ持って決まっているという。赤ちゃんの健康な将来を考えると、適切な発育とのバランスを見つめ直す必要があるのではないだろうか。