熱狂的な信者よりもストリートギャングのほうがISに加入しやすい?

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著:James L. Gelvinカリフォルニア大学ロサンゼルス校 Professor of Modern Middle Eastern History)

 スペインフィンランドでのテロ事件を目にして、我々はどうしても「一体誰が、どうしてISに加入するのだろう」と、考えさせられる。

 中東の近代史を研究する教授として、私は研究者人生のほとんどを中東の地域、文化、社会と政治の研究に捧げてきた。近年では、私はISとそのテロ行動について研究し、執筆を行っている。私を含め、多くの研究者はどのように過激化が進むのかに注目してきたが、人々がなぜどうやってISに魅惑されるのか、新しいアイデアが最近発見されている。

◆どこから新しい構成員は来るのか
 ISがその支配地域、近隣地域、また国外からも構成員を集めていることは、よく知られている。ラジオ・フリー・ユーロップ/ラジオ・リバティが、ISが領土拡大し始める前の2013年に発表したところによると、イラクとシリアにおけるISの構成員は合わせて17,000から19,000人ほどいたという。

 しかし、これは実際よりも低く見積もられた数値だろう。2015年には、米国主導の爆撃による初年度のを補うのに余りあるだけの、約30,000人が加入していた。

 ISの構成員の多くは中東の出身である。イラクとシリア以外の国から来るアラビア人の多くはサウジアラビアとチュニジアの出身だ。他にも北米、ヨーロッパ(対人口比では驚くべきことにベルギーが最も多い)、オーストラリアや、コーカサス(特にチェチェン)から来ている構成員もいる。

◆なぜ加入するのか
 社会科学者は、人々がISに加入する理由をいくつか挙げている。彼らの主張によれば、イラクやシリアで勧誘された何割かは、ISのメッセージに共感して加入するという。また、そうでない人たちは、復讐や金銭的報酬、宗派闘争、仲間意識捕らえられたヤズィーディーの女性や少女などを性奴隷として受け取る約束などを理由に参加したり、強要されて加入したりするという。

 過激な暴力を行うことによる権威の獲得や、社会への不満、社会病質性も、差別や貧困に苦しむヨーロッパのムスリムがIS加入を考える要因になっている、と主張する社会学者もいる

「インテリアの装飾のほうがアマチュアの心理学よりもよっぽど科学的だ」と米国最高裁判所裁判官だった故アントニン・スカリア氏が言ったのを想起させるほどに、人々がISに加入しうる理由はあまりにも多いのだ。

◆一匹狼、「燃えあがるバナナ」と、荒々しさ
 世界中のISによる攻撃は、メディアによるところの「一匹狼」によって行われる。つまり、ISの統制について直接知識を持っているわけではない人たちによってこれらが行われているのである。彼らを間違っても魅力的だと思わないように、ランド研究所は「燃えあがるバナナ」という表現を推奨している。

 このようなテロリストやISの領地に渡ってISに加入する人々がグループに忠誠を誓う理由について、二つ仮説がある。一つ目は「過激化」によるものだ。

 過激化とは、人がジハード的なアイデアを受け入れやすくなっていく段階的なプロセスを指す。まず彼らは、心の支えと一般的な価値体系を提供してくれる家族などの社会的つながりを遮断する。そうして彼らは過激な宗教的反対文化に浸っていく。これらは、彼ら単独で行われることもあるし、ジハードを求めるリクルーターがそのプロセスに連れ込むこともある。どちらの場合でも、結果は同じである。

 ISに対抗するための施策はこのモデルに基づいている。例えば、米国国務省は「ISへ出向くな、逃げろ」という題の短い動画を公開した。その動画は、ISが行った十字架へのはりつけ、かく首による殺害、自爆テロやモスク破壊の様子を映像で紹介し、「考え直せ、背を向けろ」と呼び掛けて終わる。

 興味深いことに、この動画は、新メンバーの加入に大きな役割をもつとも言われているISのプロパガンダを模倣している。ISのプロパガンダは、自らの行動の宗教的な理由よりも、その暴力性に焦点を当てる傾向がある。ISはグランド・セフト・オート5をもとにしたゲームを発表したこともある。そのゲームは車を盗んで警察と闘うというよりも、人員運搬車を破壊したり、敵兵を撃ったりするものであった。

 もしかしたら、そうすると、過激化モデルは一般的に当てはまらないかもしれないし、誤ったものかもしれない。もしかしたら熱狂的な宗教観以外の理由がはたらいているのかもしれない。

 過激化の理論モデルが、誤りではないにしても、問題の一部にすぎないことを示す例は他にもある。例えば、イギリスのバーミンガムからシリアへ向かう前に、自らの知識を補うために「バカでもわかるイスラム教」や「バカでもわかるコーラン」等を購入したとされる後にジハード主義者となる二人の話も有名である。

 新聞などのメディアは、これらの加害者がISに力を貸す直前まで、バーで酒を飲んでいたり、ゲイバーに出入りしていたり、西洋人の彼女がいたりしたなどの情報で、事件の原因がわからなくなり、混乱する。そして多くの場合、彼らの自堕落な生活は、潜伏中にばれないよう繕っていたものだったとして解釈されるのだ。

 例えば、フランスのニースでトラックを運転する男が84人を轢いた事件では、ラマダーン中に飲酒をしていたような人がどのように熱狂的な教徒に急変したのか、フランスの内務大臣は説明に苦しんでいた。

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 そのため、多くの専門家はこの過激化モデルを他のモデルで補填するか置き換える必要があると主張している。

 専門家によると、「反社会的人格異常者」と精神病医師が呼ぶような人や周辺化された人々の価値観とISの行動が合致するために、彼らは他の宗教的な反社会勢力に加担するよりもISに加担する傾向が強いという。

 もしかしたらISに加入する人は、荒々しい男らしさを奨励し、地味な仕事を軽蔑し、短期的な充足感を満たし続ける価値観に惹かれているのだろうか。あるいは、暴力、忠誠、家父長制、殉死に至るほどの自己犠牲や女性を快楽のための道具として蔑むことにより神からの救済を得られると教える文化に惹かれるのだろうか。

 この記事の考察から結論付けるならば、ISはアルカイダ的な厳格さをもった団体というより、西洋人に広く認知されたストリートギャングのようなものなのだ。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by AnothonyTG.

The Conversation

Text by The Conversation