同性結婚を合法化すればオーストラリアの若者の自殺率は下がる

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著:Jo Robinsonメルボルン大学 Senior Research Fellow, Orygen, The National Centre of Excellence in Youth Mental Health)、Eleanor Baileyメルボルン大学 Research Assistant, Orygen, the National Centre of Excellence in Youth Mental Health)、Pat McGorryメルボルン大学 Professor of Psychiatry)

 オーストラリアはいまだに同性結婚を合法的に認めていない先進国の一つである。 今度の郵便調査で結婚平等が公に支持されていることがわかれば、自由投票が議会で開催される。 そうでなければ、現政権が続く限り、同性カップルは結婚することはできないだろう。

 同性カップルは異性カップルよりも精神障害になりやすく、自殺のリスクも高い。もし結婚平等が支持されなければ、彼らの健康にとって非常に有害な結果になるだろう。 これは、同性愛者たちが日常的に晒されている汚名や差別が直接的要因である。

 調査によると、同性結婚を合法化した国や地域では、同性愛者と異性愛者の精神衛生上の差ははるかに小さい。 これは、自殺率が何十年にもわたって国家の重大な懸念となってきた若者の場合には特に顕著である。

 今週のAustralian Institute of Family Studies(オーストラリア家庭研究所)の全国調査によると、14-15歳のうち10%が過去12ヶ月の間に自傷行為を行い、5%が自殺を試みた。 同性結婚を合法化すれば、同性愛者の間だけでなく、社会全体の自殺率も下がるだろう。

◆同性結婚が禁止されている場合の健康へのマイナスな影響
 同性を好む若者は社会的差別を既に味わっており、同性結婚が合法化されなければさらに悪化する可能性がある。 同性を好む若者は、異性を好む若者よりも精神障害と診断される可能性が2倍高く、6倍以上が自殺願望を持ち、5倍が実際に自殺を試みている。

 こういった不平等は、同性結婚を支持していない地域で、差別が制度的に支持されている場合に悪化する。

 例えば、米国の研究によると、2004年と2005年の選挙で同性愛者の結婚を禁止した州に住んでいた同性愛者の間では、気分障害や不安障害などの精神障害やアルコール関連の問題が大幅に増加していることが判明した。 そのような憲法改正のなかった州に住んでいた人々や、あるいは同じ地域社会でも異性愛者の間では、そのような増加はなかった。

 別の米国の調査によれば、差別的意識の強い地域社会に住んでいる性的マイノリティ(性的アイデンティティ、嗜好あるいは習慣がマジョリティと異なる人々)の間では、自殺だけでなく身体的および精神的障害の発生率も大幅に上昇していることが判明した。 また、性的マイノリティの平均自殺年齢は、他の地域と比較して、これら「偏見の強い」コミュニティではかなり低いことが示された。

◆同性結婚が合法化されている場合の健康面での利益
 このような、同性愛者と異性愛者の精神的健康の差に示される不平等は、同性カップルが制度上認められた結婚など、異性愛者と同じ権利が与えられている場合、必ずしも存在するとは限らない。 この調査結果は、中年男性や若者どちらにも当てはまる。

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 デンマークでは、1989年に登録パートナーシップ法が施行されてから、同性愛者の既婚男性は早期死亡率が減少した。同様に、米国では、同性結婚政策の実施により、 自殺を試みる高校生の割合が7%減少した。 この相関は性的マイノリティの学生の中で最も強かった。

 第2回Second Australian Child and Adolescent Survey of Mental Health and Wellbeing(オーストラリアの小児および青年期の精神的健康および幸福調査)の計算に基づくと、これはオーストラリアの中等学校の生徒による自殺が毎年約3,000件減ることに相当する。 これは必ずしも結婚そのものに起因するものではなく、結婚するための合法的な権利に起因するものである。 また、精神の健康に限らず、金銭的要因、身体的健康および医療費に関しても利益が報告されている。

◆「ノー・キャンペーン」がもたらすだろう影響
 また、国民投票とそれに関連する「ノー・キャンペーン」がもつ精神的健康やコミュニティの健全性への影響に関する研究がいくつかある。 これらは一貫して、同性結婚についての否定的なメッセージにさらされること独特な社会ストレスの形態を作り出し、相対的に悪い心理的結果を生み出すことを報告している。

 これらのキャンペーンの自殺関連の結果に対する具体的な影響は今のところ分かっていないが、マイノリティのストレス、精神疾患と自殺の関係は十分に証明されている。 したがって、このプロセスを通じてリスクが増大する可能性がある。 実際に、精神的健康と危機の支援サービスは相談件数の上昇をすでに報告している。これは現在行われている議論が原因だろう。

 オーストラリア政府は近年、若年者を含む精神障害の治療や自殺予防に大きく注目しており、多くの援助を行っている。 しかし、現在も続いている制度的不平等と、今なされている有害な議論は、(議論が尊重されることを政府が保証しているにもかかわらず)間違いなく精神障害と自殺の両方のリスクを増大させるであろう。 このリスクは、今後数ヶ月にわたって非常に真剣に受け止めなければならない。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.

Translated by Yoppo

The Conversation

Text by The Conversation