観光客誘致、女性の活躍推進 保守的なサウジが経済改革書で見せた驚きの変化
サウジアラビア経済開発評議会議長ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、グローバル化の流れに向けた経済改革計画「ビジョン2030」を作成した。「ビジョン2030」にはサウジアラビアの世俗化を予想させる文面がいくつか存在する。そこからどのような兆しが見えるのだろうか。
◆紅海のリゾート化
ムハンマド・ビン・サルマン氏が作成した経済改革計画「ビジョン2030」には紅海のリゾート化について言及されている。オイルマネーに加え、国内外からの観光収入で国をさらに潤すことが目的だが、これは旅行業界の中では衝撃的な出来事である。なぜなら、サウジアラビアは制度上、「観光立国」とは程遠い国だからだ。
サウジアラビアは外国人の入国に対して厳しい規制があり、個人旅行での観光ビザが発行されることはまずない。また、娯楽に関しても厳しい規制があり、映画や音楽コンサートなどもほとんど行われていない。つまり、旅行業において最も重要な要素となる「アクセス」と「娯楽」が法制度によって厳しく制限されているのだ。
また、女性に対する厳しい規制も旅行業の発展を妨げている。女性は男性の後見人の許可なしでの海外旅行を禁じられているほか、車の運転でさえも禁止されている。服装に関しても厳しい規制があり、女性は大衆に肌を見せることを許されていない。紅海のリゾート開発においては、女性のビキニが解禁されるかも注目されるところだ。
このように「紅海のリゾート化」は、従来の法制度によって様々な問題にぶつかる。よって「ビジョン2030」は「紅海のリゾート化」にあたって従来の法制度がどのように変わっていくのか注目されている。
◆「ビジョン2030」から見える世俗化の流れ
サウジアラビアの世俗化は「紅海のリゾート化」のみならず、グローバル社会での経済発展においても無視できない課題となっている。政教一致体制からなる時代に合わない諸制度はメディアを通して世界の様々なところで非難を受けている。この厳格なイスラム国家であっても、現行制度の見直しは喫緊の問題となっている。
CNNによると、ムハンマド・ビン・サルマン氏は「ビジョン2030」において文化・娯楽活動の促進と女性の活躍推進などを掲げている。企業の積極的なグローバル展開と女性の雇用率上昇を実現する方針だ。「ビジョン2030」による世俗化は世界で注目を集めている。
◆時代を変えるのは若者の力
イスラム法を徹底的に尊重し、独自の文化を守って来たサウジアラビアも、グローバル化の流れは無視できないようだ。インターネットの普及により、世界の様々な文化に触れた若者の価値観は徐々に変化してきている。肌を晒したムスリム女性の動画投稿が度々メディアで話題になるが、世界に向けた自己主張の場としてソーシャルメディアが利用されている点は注目すべきであろう。「ビジョン2030」から予想されるサウジアラビアの世俗化は、新たな価値観を持った若者の力によるものではないだろうか。