ファストフード店増える英国、1人あたりの店舗は日本の6倍 貧困エリアに多く問題に

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 ファストフードと言えばアメリカが思い浮かぶことだろう。しかしフィッシュアンドチップスが有名なイギリスにも多くの店舗がある。イギリスの人口は日本の半分ほどにもかかわらず、日本の3.2倍のファストフード店が存在する。

 これらは国内でも貧しいエリアに密集している。「貧乏なアメリカ人は、裕福なアメリカ人よりジャンクフードを多く食べるのか?」という記事が先日掲載されたが、イギリスに関してはイエスと言えそうだ。

◆イギリスは3年間でファストフードの店舗数は8%増、人口は2.2%増
 現在日本では、ファストフード店は17,495店舗を数える。(2017年6月度、一般社団法人日本フードサービス協会)。これは洋風・和風・麺類・カレー等の持ち帰り米飯/回転寿司などを含む。

 イギリス国内では、この3年間で4,000軒のファストフード店が増え、現在56,638店舗にも上ることがケンブリッジ大学の調査で分かった(ガーディアン紙)。これは全飲食店の四分の一以上を占めている。Feat(Food Environment Assessment Tool)の定義するファストフードは、ホットフードを注文しウェイターサービスなしにレジで会計、店舗内には限られた座席があるか持ち帰りのみであり、サンドイッチ専門店のようなパン屋・KFC・マクドナルドといった店・そしてチェーン店でないローカルの店舗となっている。

 日本ではコンビニのホットスナックが人気だが、イギリスにも同様の店舗形態があるので、純粋に互いの国が定義するファストフード店の数のみで比べることとする。

 日本の人口が約1億2,675万人(2017年7月現在、総務省統計局)であることから、1万人あたりの店舗数は1.38となる。一方イギリスは6,565万人(2016年、国家統計局)であり、1万人あたりの店舗数は8.63である。

◆ファストフード店の密度・貧困・肥満の関係
 ガーディアン紙は、貧困のエリアにファストフードの店舗が過度に多いと指摘している。特にマンチェスターやリーズ、ブラックバーンなど北部の町、ロンドンの低収入の自治区そして南部のシーサイドリゾートである。

 公衆衛生部会のシモン・ケイプウェル教授は、「ファストフード店で売られるジャンクフードと甘い飲み物は、イギリスの肥満と糖尿病の蔓延に大きく寄与している。そのうえ、貧困層の住む地域におけるファストフード店の密度の高さは、健康面における現存のかなりの不平等さを悪化させる。これらはとても憂慮すべき傾向だ」と述べている(ガーディアン紙)。

 英国公衆衛生庁によると、現在63%の大人が前肥満(BMI25以上)・または肥満(BMI30以上)であるという。特に南アジア系の人種によくみられるとのことだ。肥満は1993年から2015年の間に14.9%から26.9%まで増えた。毎年3万人以上が高血圧や2型糖尿病で命を落としている。

◆ファストフード店の増加に歯止めはかかるのか
 ガーディアン紙によれば、20以上の地方自治体が2010年からファストフード店の規制の計画を打ち出している。そのなかには、学校の400m以内の新規オープンを認めないといったような計画も含まれている。ところが、店舗は増える一方だ。

 上述のシモン・ケイプウェル教授によると、自治体は規制を進めたいものの、中央政府からの大幅な予算カットが進行している中で、ファストフード店からの税収に期待せずにはいられない難しい立場にあるということだ。

 英国公衆衛生庁は、ファストフード店に、塩・砂糖・油を減らすこと、揚げ物を減らすこと、全体量を減らすこと、野菜や果物を増やすこと、ヘルシーな選択肢を増やすこと、よりヘルシーな食材の仕入れ、カロリー情報の提供を呼び掛けている。店舗側がそういった改善を実施し、国民がより健康を意識するようになれば、肥満の増加は食い止められるだろうが、慣れた味覚と食事量はなかなか変えがたいものかもしれない。

Text by 鳴海汐