大和君発見、「子供の幸福度世界一」の国民はどう見た? 「しつけ」に対して別れる意見

「あの日本人の男の子、見つかったんだって!」
「ホント?良かったね!」

 田野岡大和君発見のニュースは、欧州の小国・オランダの第一放送(NOS)の早朝ニュースでも報道された。蘭国民も注目したこの嬉しい結果に、大和君と同年代の子供を持つ親はもちろんのこと、誰もの目頭を熱くする喜ばしいニュースになったことは間違いない。約1週間前、大和君の行方がわからなくなったと報道され、警察や自衛隊が懸命に捜査する様子が同放送局によって放映されたとき、国民の大半は彼がまだ7歳であること、そしてうっそうとした山林内で行方不明になったことを知り、祈るような気持ちで吉報を待っていたことだろう。

◆しつけの一環?
 大和君の父親が、しつけの一環として行ったとされる置き去りに関して、日本では非難が集中しているが、オランダでもやはり同様だ。年端の行かぬ我が子を、たとえしつけといえども山の中に置き去りにした行為そのものに関しては、概して否定的な意見が大多数だ。たとえば、「大和君を、両親の元に返すな」という、厳しい意見もあった。今回のように、度を越したしつけを施す親の元へ戻るより、大和君にとって適切な教育を施してくれる人の元へ養子に行ったほうがいい、という少々非現実的な意見や、「結果的には、大和君が両親をしつけてくれたことになるのでは?これで少しは、親にもしつけの意味がわかっただろう」というものもあった。

 しかし、日本とオランダは当然のことながら文化的背景や諸事情が異なるため、「日本では、置き去りもしつけのひとつなの?」とか、「オランダと違って、日本には山がたくさんあるから、そういうしつけもアリ?」などと、単純に疑問を持った人も多く、日本式の厳しい子育てが、今回の事件を招いてしまったのだろうと理解(誤解)していた人もいたようだ。

◆大和君の無事と勇気に拍手喝采
 しかし国民たちは、大和君の冷静な判断とそのサバイバル精神に対しては絶賛を送っている。7歳ながら、生き延びるために最善を尽くしたといえるべき行動は、彼の賢さと判断力(身を寄せた場所から移動しなかったこと)によるもので、驚異的との声が挙がっている。夜間もたった一人、山の中で過ごさねばならないとは、普通ならば恐怖心からパニックに陥っても不思議ではない状況で、よくぞここまで冷静にいられたものだと感心しきりである。このように、精神的に強い子供が育つ日本とは一体、どのような教育を施しているのか、との問いかけも多かった。

 ニュースでは、大和君の父親が涙ながらに警察や自衛隊に対して謝罪の言葉を述べる様子も報道されたが、オランダ人たちの多くはこれに納得がいかなかったようだ。その理由は、「泣くぐらいなら、度を越えたしつけをするな!」というものだ。これに対して、「しつけに関して、周囲がとやかくいう筋合いのものではない」、「万事丸く収まったのだから、これで良しとすべし!」という意見も多く聞かれたが、やはり、置き去りは「しつけとしては、やりすぎ」と非難の対象となっている。

 オランダは、ユニセフの調査によれば「子供の幸福度世界一」の栄誉に数回、預かったことがある。幸福の度合いを測る物差しは個人個人で基準が異なるとはいえ、子供たちが「世界で私たちが一番、しあわせなんだ!」と実感できる要素が生活のなかに多いことは間違いない。これは主観だが、子供(未成年者)への興味・関心が一般的に非常に高く、国や政府、そして人びとが一丸となって子供の将来のために最善を尽くす、といった感は確かに存在する。「世界一幸福な子供たち」を擁する国の国民たちからは、大和君のあっぱれなサバイバルぶりに対し、止まない拍手喝采が送られているようだ。

Text by カオル イナバ