「移民は先進国経済にとってプラス」 英国企業、優秀な外国人労働者を積極採用
外国人による家事代行サービスが、日本でも年内に解禁となる運びだ。少子高齢化による労働力不足解消の手始めとなるのか?外国人労働者活用が進むイギリスの現状を交え、日本の外国人労働、移民への対応を考察する。
◆家事代行に外国人を積極採用
外国人の家事代行サービスは、国家戦略特区の大阪府、神奈川県で年内に解禁される予定だ。背景には人手不足があるとされており、対象となるのは、直接雇用されるフルタイムの外国人で、労働期間は最長で3年間。報酬も日本人と同等額以上と定められる。家事代行サービスは、今後ニーズが拡大すると見られており、大手各社もフィリピンで採用活動を開始するなど、人材確保に積極的に動いている(日経新聞)。
WSJは、日本は長らく外国人労働者受け入れに抵抗してきたが、実際には外国人はすでに日本の人手不足を補っていると報じる。週30時間の労働が許可される外国人学生や外国人実習生、さらに適切なビザなしで就労する外国人が、ラーメン店からコンビニ、自動車部品工場まで、やり手のいない仕事を担っていると指摘している。同紙は特に、技能習得が目的の外国人実習生制度が、低賃金労働につながっているとして、海外から批判を受けていると報じている。
◆移民受け入れに賛否両論
経済学者たちは、日本を成長軌道に戻そうとする安倍首相にとって少子高齢化が一番のチャレンジだと指摘している。失業率はこの数十年で最低レベルに近いが、単純労働をしたがる日本人は少ない。日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩氏は、「外国人労働者は金の卵」と言い、人口減少の今、不振の日本経済立て直しには、移民が必要と述べる(WSJ)。
しかし反対意見も多い。WSJは、移民は人種的に均質な日本に溶け込めない、犯罪や社会不安を引き起こすかもしれないという考えもあり、日本人にとってはセンシティブな話題だと指摘する。低賃金でも働く大量の移民の流入によって日本人の職が奪われるのではないかという不安もあり、経済アナリストの三橋貴明氏のように、移民に頼らず生産性を高めて賃金を上げるべきという意見もあるとしている。
◆移民で税収アップ。社会への利益は大きい
一方で海外の事情はどうだろうか?高齢化を迎えている多くの国々では、雇用者は若く教育のある外国人労働者をおおむね歓迎しているとロイターは述べる。イギリスでは3月までの1年間で、33万人の人口の移入があったことを伝えている。同国の雇用者で作る団体、Institute of Directorsは、メンバー企業の半数はスキルが高いと言う理由で移民を雇用しており、今やイギリスの公共サービスにも、彼らは欠かせない存在だと述べているという。
ロイターは、多くの学術的研究により、移民の先進国経済に対するポジティブな影響が指摘されているとし、だれもやりたがらない低賃金の仕事から、高度なスキルが必要とされるものまで、今やヨーロッパではより多くの外国人労働者が求められていると説明。移民への社会福祉費支払いを嫌う声もあるが、彼らの税収アップへの貢献のほうがずっと大きいことが、研究者よって証明されていると述べる。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究によると、移民の受け入れはイギリスに利益をもたらしている。また、すでに資格を持った移民を受け入れたことで、700万ポンド(1400億円)の教育費が浮いた計算になるとも述べている。(ロイター)。
◆良い人材なしではビジネスは成り立たない
ロイターによれば、このところのシリアなどからの難民の大量流入問題で、ヨーロッパでも移民を最大の懸念とする人が増加。イギリスでも人口移入は年間10万人に抑えるという計画の堅持が表明されているが、受け入れに舵を切った今では、後戻りは難しいようだ。
全国規模でレストランを経営するイギリスの有名シェフ、ジェイミー・オリバー氏は、ニュース番組で、すでに多くのビジネスが外国人労働者に頼っていると指摘。今の移民の数は行き過ぎで、皆が恐れを感じるのはもちろんだが、どんな仕事であろうが「一生懸命働く、良い人材が求められている」と述べた。そして、「もし外国人がいなかったら、自分のすべての事業は明日にでも閉めざるを得なくなる」と語り、移民の必要性を認めた(英エクスプレス&スター紙)。