川内原発再稼働へ 海外メディア、反対派の声を伝えつつ再稼働には理解

 鹿児島地方裁判所は22日、九州電力の川内原子力発電所1号機、2号機の再稼働中止を争う裁判で、「国の新しい規制基準に不合理な点は認められない」などとして、再稼働に反対する住民が行った仮処分の申し立てを退ける決定をした。川内原発1・2号機は既に、原子力規制委員会から新規制基準に適合していると認められている。九電は今年7月の再稼働を目指している。

 今回の決定について報じたイギリスやドイツのメディアは、原子炉が新基準に適合しても不安は依然払拭されないが、国や電力会社にとって今のところ、他に選択肢はないのでは、との見方を示している。

◆高まる注目度
 今回の裁判と同様に再稼働中止を争っていた大飯原発訴訟(福井県)では、福井地裁が再稼働差し止めを命じ、この件は名古屋高裁金沢支部で控訴審中だ。また、14日に判決が下された高浜原発(同県)訴訟では、同地裁が、全国初となる原発の再稼働差し止めの仮処分を決定した(関西電力は17日、異議と執行停止を申し立てた)。このような経緯から、鹿児島地裁が今回どのような判断をするのか、注目されていた。

◆残る不安
 独メディア、ドイチェ・ベレ(DW)や英紙ガーディアンは、反対派の主張を取り上げている。

 DWでは、脱原発をめざす市民団体『グリーン・アクション』のアイリーン・美緒子・スミス代表が、九電は平均的な地震の強さを査定に使ったとし、2011年の福島原発事故から何も学んでいないと批判している。「地震科学は、十分に解明されていない。地域で起きうる地震の規模をいくらかの範囲に限定する予想は、間違いなく十分とはいえない」

 また、鹿児島には活発な活動を続ける桜島などの火山もある。ガーディアンは、「噴火の予知能力は、不十分であるとわかっている」、「(火山の巨大)噴火の見込みが低いとの九電の主張には、根拠がない」との原告の意見を取り上げた。

◆政府原案では原発再稼働の方針
 しかしながら同時に、国や電力会社にとって今のところ、他に選択肢はないのでは、との見方も各メディアは伝えている。原発停止で輸入燃料費の増加による電力会社、家庭、企業の負担は増加しているとの指摘だ。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、今回の鹿児島地裁の判断で、2つの原子炉が再稼働に近づいたと報じる。同紙は、原発再稼働が、日本のエネルギーの輸入費を削減することを助けるだろう、としている。

 また、日本政府はCO2排出削減の野心的な目標を掲げているが、今のままでは達成が難しいのではないかと疑問の声が上がっている、とガーディアンは報じる。同メディアは、6月にドイツで開かれるG7に出席予定の安倍晋三首相が、目標達成に関し、他の国の首脳から批判を受けることになるかも知れないと懸念した。

 このような状況下で政府が選んだ道は、経済産業省が23日に発表した、2030年時点での最適な電源構成(ベストミックス)の原案からうかがえる。原案では、原発の比率を20~22%、再生可能エネルギーを22~24%とし、原発利用の割合は、引き下げを数ポイントにとどめた。温室効果ガスの排出削減や電気料金の抑制には、再生エネルギーの拡大だけでなく、原発の一定の活用が必要と判断した(時事通信)。

◆今後も注目される法廷での争い
 エネルギー部門のアナリストらは、日本は再稼働する以外にほとんど選択肢がないと考えている、とDWは報じる。同メディアでは、日本エネルギー経済研究所の山口馨氏が、「他の選択肢が見つかるまでだ」とし、それまでの再稼働は「賢いやり方だと思える」と述べた。しかし、記事の最後には、「この争いはまだ終わっていない。全然終わっていない」との反対派の発言で結び、余韻を残している。また、FTも、今後長期的に原発を使用することができるかは、国民の強い反対もあり、どうなるかわからないとしている。

Text by NewSphere 編集部