日本の桜に魅せられる中国人観光客 “中国に桜はあっても同じ経験は出来ない”
このところの円安でお手頃感の増した日本観光。2月の中国旧正月の時期には、大挙して押し寄せる中国人観光客が話題となったが、今年はお花見シーズンの日本も注目だ、と海外メディアが報じている。
◆訪日観光客の伸びが好調
アメリカのデジタル経済誌『Quartz』によれば、旅行観光経済の規模においては、日本は世界第4位。政府はアベノミクスのもと、「2020年までに訪日外国人旅行者数を2000万人に」と言う目標を掲げており、ビザ発給要件の緩和や外国人向けのサービスを増やすことで、ゴールに向かっていると同誌は述べる。
世界旅行ツーリズム協議会によれば、2003年以来、観光分野は着実に成長。2013年にはGDPへの直接寄与は2.2%(約10兆6000億円)を占めるまでになり、2024年には2.3%(約12兆4700億円)になると見られている。しかし、今年の数字を見れば、この予測を上回ることも期待できる。今年2月時点で、訪日外国人数は前年比58%増。中国からの観光客は、実に159%増と言う結果であった(Quartz)。
◆なぜ花見シーズン?
旧正月の時期に日本を訪れた中国人観光客の「爆買い」は記憶に新しいが、今年の桜のシーズンには、35万人の中国人が日本を訪れるとされ、お花見ツアーや桜関連商品の購入で11億ドル(1300億円)の消費が見込まれている。韓国紙によれば、この時期には韓国人観光客も70%増の見通しだと言う(Quartz)。
花見のために、なぜ観光客が集まるのか。中国のグローバル・タイムズ(環球時報英語版)に投稿された読者の記事が、その理由を説明している。
日本を訪れたその女性読者は、霧雨の中、二条城を見学。何百本もの桜の木に囲まれ、寒さと旅の疲れから来る不快感も一瞬忘れてしまうほど、やさしく舞い落ちる壊れそうな花びらに魅了されたのだと言う。桜は『もののあはれ』の具現化であるという彼女は、花見に集まり散りゆく花を愛でるのが日本人だと述べ、そのような伝統のない中国では、桜の木はあっても同じ経験は出来ないと説明。桜の時期に、中国人旅行客の団体が日本ならではの体験を求めて訪日するのも、責めることができないと語っている。
◆景観か、安全か?
一方、テレグラフ紙は、「お花見はおしまい?」と題し、東京の桜についての気になる記事を掲載している。
日本の都市では、戦後数十年に渡り、大量の桜の木が植えられてきた。2013年の東京都の調査では、4万4000本の桜の木が都内で確認されている。日本樹木医会の広報担当者によれば、桜の木の寿命は約60年で、東京の桜は大きくなり過ぎで、病気にかかり、枝も落ちてきているということだ(テレグラフ紙)。
東京都はすでに数か所で、植え替えを試みているが、「たとえ病気の桜にでも強い親しみを感じる」地元住民の反対で、作業は進まないらしい。国立市では、倒木による車の損傷事故を受け、古い桜の伐採作業を行ったところ、景観を壊すと反対する人々が介入阻止するという事件も起こっている(テレグラフ紙)。
今や大切な観光資源ともなった桜だけに、その美しさを絶やさないためにも、適切な維持管理が必要と言えそうだ。