福島原発:動かぬ除染装置、凍らぬ凍土壁… 問題山積みの事故処理に海外メディア懸念

 福島第一原子力発電所で事故が起きてから4年が経過した。廃炉作業が完了するまでに、少なくとも30〜40年という長い年月と莫大な費用を 要すると見込まれていた。しかし、作業が始まると問題が頻発し、汚染水対策などに多額の費用が無駄になっていたことが判明するなど 、当初の予算をオーバーする恐れが生まれている。

◆700億円近くが無駄に
 「アルジャジーラ・アメリカ」は、税金を投入した廃炉・汚染水対策の費用が無駄に使われていたことが判明した上に、汚染水対策の柱として進めていた「凍土壁」が使えない可能性があると報じている。

 会計検査院の調査によると、2014年3月までに国が投じた費用は1892億円、東電は3455億円を支出。また、東電の支出の中で、686億円の費用が無駄となっていたことが判明した。321億円支払ったフランス製の除染装置が3ヶ月しか働かず、160億円かけた汚水タンクはすぐに水漏れを起こし汚染水が海へと流出した。 その他、184億円の蒸発式の塩分除去装置や、21億円かけた地下貯水池などが挙げられている。

 さらに汚染水の流出を防ぐために進められていた「凍土壁」の設置は、319億円 をかけたものの、うまく凍らずに失敗。見直しを迫られている。

◆廃炉に必要な装置のデモが失敗
 さらに新たな問題が起きている。原子炉内に溶け落ちた燃料を測定する装置を東芝と国際廃炉研究開発機構が開発していたのだが、27日に行われたメディア向けのデモでまったく動かなかったのだ。

 東芝の関係者によれば、プログラムの不具合ということだ。またデモで使われた測定器が実際に福島第一原発で使用されるわけではなく、2016年3月までに新たに設置される。

 専門家の指摘によれば、原子炉の廃炉には、溶けた燃料の状態や形を把握することが不可欠だ。そのために、5億円かけて測定器が開発されているが、デモの失敗はプロジェクトの行く末がどれほど困難なものかを示しているとAPが伝えている。

 アルジャジーラは、廃炉作業は少なく見積もっても30〜40年かかると見られるが、それでも人員確保、安全や健康の問題が懸念されている上に、このように無駄や問題が続出するのであれば、当初の予算をオーバーしてしまうのでは 、と厳しく指摘する。

◆原発事故は社会的・経済的に大きな影響
 一方でロイターは、事故で影響を受けた福島の人々についてリポートしている。3月14-18日まで仙台で第3回国連防災世界会議が開かれた。それに合わせて「福島 10の教訓~原発災害から人びとを守るために~」というブックレットが、原発事故で影響を受けた福島の人々を支援する市民グループ 「福島ブックレット刊行委員会」によって作成されたのだ。

 ブックレットでは原発事故の長期間にわたる社会的・経済的影響が述べられている。放射能の影響を考えて親子が別々に暮らしたり、地域社会に亀裂を生んだりしている現状が示されているのだ。

 いったん事故が起これば大規模かつ長期間の影響を及ぼす原発だが、政府は原発再稼働へと舵を切ろうとしており、さらにはその技術を海外へ輸出しようとしている、とロイターは指摘する。

 ブックレットの執筆を行ったNPOふくしま地球市民発伝所 の竹内俊之事務局長は同記事で、受け入れ国の安全対策への懸念を示している。識字率が高くない社会での安全対策教育の難しさなどの問題を挙げている。

Text by NewSphere 編集部