移民受け入れをどう進めるべき? 人口減少、外国人比率は世界151位…現状を概観
2月11日付産経新聞朝刊に掲載された、作家の曽野綾子氏のコラムに対し、国内外で非難が巻き起こった。このコラムは、前半では介護の労働移民受け入れを説き、後半では人種ごとに居住区は別にすべき、と主張したものだ。後半がアパルトヘイトを許容しているかのような文章だったため、非難はそこに集中した。しかし、前半の「人口減少だから、労働移民受け入れはやむを得ない」という部分に対しては、ほとんど論評が見られなかった。
一方、欧米や豪メディアの中には、以前から、日本の移民受け入れの必要性に踏み込んだ論評もあった。NewSphereとしても、人口減少・少子高齢化が進む中、日本経済の未来を考えるうえで、「移民受け入れをどう進めるか」の議論は重要だと考える。本稿では現状と全体像を整理する。
◆人口減少・少子高齢化の実状
まず、移民受け入れ議論の前提にある、人口減少・少子高齢化の実状についてみていく。日本は世界一の長寿国で、「超高齢社会」になっている。これは、総人口に対し、65歳以上の高齢者人口が占める割合(高齢化率)が21%を超えた社会のことだ。日本の高齢化率は26%だ。
総務省統計局の人口推計によると、2月1日時点での日本の総人口は1億2697万人(概算値)。前年同月比で22万人減となった。2011年以降、減少傾向が顕著になっている。2050年までには、総人口が9500万人に減少すると予測されているという。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」によると、2060年までに総人口は8700万人に減少し、そのとき約4割を65歳以上が占めると予測される。
内閣府の予測によると、日本は2060年までに労働力人口の4割を失い、それによって潜在成長率が0.9%もそがれる。
合計特殊出生率は、2005年の1.26を底として、少しずつ上昇しつつあるものの、2013年で1.43と、人口を維持するために必要とされる2.07を大きく下回っている。
◆日本在留外国人の現状
法務省によると、日本在留外国人は約210万人(2014年6月末時点)。地域別では、中韓などアジアが8割近くと最も多い。日本の総人口に占める在留外国人の割合は約1.7%で、これは世界195ヶ国151位と低い水準にある。
おおまかな内訳としては、永住者・定住者・日本人の配偶者等が136万人。国際業務・経営・企業内転勤などが20万人。留学が20万人。技能実習・研修が16万人。
◆政策の実状
安倍内閣の成長戦略では、主に女性、高齢者が活躍できるような雇用環境の改善がうたわれている。外国人労働者については、「世界で通用する専門知識、技術」をもつ高度人材の受け入れ拡大を目指す一方、いわゆる単純労働者については、「慎重な対応」という方針といえる。
現在、高度人材の要件に関する基準の緩和は段階的に行われ、今後は国家戦略特区における外国人の起業奨励、外国人家政婦の受け入れ拡大などが目指されている。
なお、前述の統計では、「高度人材」は1446人、「家事使用人」は1193人だった。
◆NewSphereのスタンス
人口減少や少子高齢化、それによる経済衰退への危機感は、広く共有されているだろう。しかし、その対策の一つとしての「移民受け入れ」については、反対論が根強い。NewSphereとしても、無計画な受け入れ拡大は問題だと考える。
ただしそれでも、もはや「賛成か反対か」ではなく、「どのような受け入れ体制を作るべきか」の議論が重要だろう。労働人口の減少という事態に対し、特効薬はない。女性活躍推進、地方創生、ロボット技術の進化、移民受け入れ推進など、できることを総動員してこそ、効果をあげられるだろう。
次回以降、具体的なメリットや政策のポイント、よくある誤解への反論などを扱っていく。