日本の女性役員比率、ダントツ最下位…米NPO調査 数値目標義務化がカギと海外報道
米NPO「カタリスト」は13日、世界20ヶ国の主要企業において、女性役員の占める割合についての調査結果を公表した。調査対象国のうち、トップに立ったのはノルウェーで、35.5%だった。日本は最下位で、わずか3.1%だった。
◆女性役員比率、北欧諸国が上位/日本は最下位
「カタリスト」は女性のキャリア推進、企業における女性の活用を支援するNPOである。アメリカのほか、日本を含む世界各地に拠点を置き、調査やコンサルティングなどの活動を行っている。
今回の調査は、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域20ヶ国の上場企業から、時価総額などに基づいた株式指標により、主要企業1500社近くを選び出して行われた。日本からは「TOPIX Core30」、東証一部上場企業のうち、時価総額、流動性の特に高い30社が選ばれている。役員数については、昨年10月時点のデータが用いられている。
調査によると、北米では、アメリカ19.2%、カナダ20.8%だった。ヨーロッパでは、フランス29.7%、イギリス22.8%、ドイツ18.5%だった。また、ノルウェー35.5%、フィンランド29.9%、スウェーデン28.8%と、北欧諸国が上位を占めた。アジア太平洋地域では、オーストラリアが19.2%でトップ、日本は20ヶ国中最下位の3.1%だった。
なお欧米では、取締役と業務執行役員(CEOなど)が分離しており、企業経営の監督や意思決定を行う取締役会は、社外取締役の割合が高いのが特徴だ。女性の役員登用は、この社外取締役を中心に進んでいるようである。
◆数値目標義務化の「クオータ制」導入国が上位
日本の現況について、米フォーチュン誌は「断トツの最低水準」と伝えた。ワシントン・ポスト(WP)紙は、日本では夫を「主人」と呼ぶことが求められている妻もおり、この数字はさして驚きではないだろう、と語った。
フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、トップのノルウェーと、最下位の日本を対比して伝えた。そして、ノルウェーでは「クオータ制」によって、役員の4割を女性とすることが(法律で)義務化されていることを伝える。ノルウェー、フランスなど、クオータ制を導入している国がリストの上位を占めていることを強調した。
フォーチュン誌は、イギリスにおいて、2011年の12.5%から、現在の22.8%へと、大幅に増加していることを伝える。FT紙は、イギリスにおいて調査対象となったFTSE100種総合株価指数の100社には、今年までに女性役員比率を最低25%にする、という拘束力のない目標が設定されていることを伝える。
また、現在18.5%のドイツは、大手企業の女性役員の比率を、2016年より30%以上とするクオータ制の義務化を、昨年12月に法制化した。WP紙が伝えた。
◆クオータ制導入はアメリカではうまくいかない
フォーチュン誌は、世界的には女性役員比率は増えているのに、アメリカでは、昨年からさして変わらず、後れを取っている、と語る。WP紙も、アメリカではいまだに19%しか女性が占めていない、と現状に対して批判的だ。
これについて、カタリストのある幹部は、アメリカ以外の国々が、積極的な措置を講じている一方、アメリカ企業は今後、ますます遅れているように見え、同様の変化への圧力に直面するだろう、と語った(フォーチュン誌)。
しかし、WP紙は、現状、クオータ制の導入が、最も成功している方策ではあるけれども、アメリカではうまく行きそうもない、と多くのビジネスリーダーが語っている、と伝える。その理由の一つは、アメリカは規制に対してアレルギーを持っているからだ。そこで、クオータ制の導入よりも、投資家から取締役会への圧力が有効であろう、との見解を紹介している。
◆女性役員が多い企業ほど、業績が良いとの研究も
女性役員が多い企業ほど、業績が良い。そのような事実が、カタリストの他の調査や、銀行、コンサルティング会社、大学での研究によって明らかになっている、とWP紙は伝える。
フォーチュン誌は、そのような大学での研究の一つを紹介している。リーハイ大学の経営学のコリン・ポスト准教授、シラキュース大学の経営学のクリス・バイロン准教授は共同で、35ヶ国の140の研究のメタ分析を行った。ポスト准教授は、総体的に、取締役会に女性が多いほど、企業の財務業績は改善する、と述べている。取締役会に女性が多いほど、より幅広い洞察、見方、経験がもたらされ、意思決定が改善されるという。
ただし、この効果は国によって差異があり、最も効果が高いのは、株主保護がより強力な国においてであるという。株主からの突き上げが強いと、取締役会は(慎重になり)女性の意見に注意を払うようになるという。またその国の、全般的な男女平等さも強く影響するという。
WP紙は、女性の積極的登用など、取締役会に多様性を持つことが企業経営にとってプラスになると、企業の指導者らが認識することが重要だ、との見解を紹介している。