アンジー映画『アンブロークン』、「無意味な拷問マラソン」と海外批評辛らつ
アンジェリーナ・ジョリーの監督作品『アンブロークン』が、クリスマスに全米で公開された。
原作は、ローラ・ヒレンブランドによるベストセラー作品で、日本軍の捕虜となったアメリカ兵ルイス・ザンペリーニが、収容所における拷問と虐待に耐え、母国に奇跡の生還を果たすという内容である。※以後、一部ネタバレがあります。
◆アンジーの反日映画?
同作品が「反日プロパガンダ」であるとして、日本の一部から反発を招いたことは、海外メディアでも広く報道された。
ジョリー監督は日本での批判を気にしていないという。「東京空襲も含め、戦争の両面を描くようにとても心を砕いた。この映画は戦争捕虜として非常に辛い経験をしたルイに敬意を表している。戦争ではすべての人が苦しんだことを知らせたかった」とUSAトゥデイ紙に語っている。
大いに話題を集めた『アンブロークン』だが、海外評論家の評価は芳しくない。
◆陳腐で深みがない
ニューヨーク・ポスト紙(電子版)は、「アンジェリーナ・ジョリーの『アンブロークン』は無意味な拷問マラソン」と題する記事で、本作品は陳腐で登場人物に深みがない、と厳しく批評している。
主人公のザンペリーニ以外は、無残に死んでいく。ジョリー監督は、ザンペリーニが犠牲者で(実際は自他ともに認めるいじめっ子だった)、ほとんど誰も知らなかった有名人(1936年のベルリンオリンピック代表)ということにしか関心がないようである。オリンピック選手だったからと言って、一人の戦争捕虜の命は他の人よりもそんなに重要なのか、と同紙は首をかしげる。
◆衰弱した体で角材持ち上げ?
特に奇妙なのは、日本兵の命令で、何の理由もなく、仲間の捕虜がザンペリーニの顔を順番に殴る場面である、とニューヨーク・ポストは指摘する。強制的とはいえ、そんな仕打ちを加えた仲間を再び信頼できるだろうか。
オンラインマガジン『Slate』によると、実際には食べ物を盗んだ罰として、ザンペリーニと一緒に他の捕虜達も殴られたそうである。
日本兵がザンペリーニに、角材を頭より上に持ち上げさせる場面もおかしい、とニューヨーク・ポストは指摘する。ザンペリーニは角材をかなりの時間持ち上げ続け、他の囚人達は働く手を止めて感嘆のまなざしを向ける。衰弱して角材を持ち上げるのもやっとな囚人が、数分以上も頭より上に持ち上げられるわけがない。
仲間の囚人の証言によると、ザンペリーニは37分間角材を持ち上げ続けた、と『Slate』は述べている。
◆日本のアメリカ人捕虜40%は拘留中に死亡
アメリカ国防省によると、第二次世界大戦中に日本の捕虜になったアメリカ人の40%が拘留中に死亡した、とUSAトゥデイは伝えている。ドイツの捕虜収容所で死亡したのは1%だったのとは対照的である。
日本政府は2009年、アメリカなどの戦争捕虜に対し正式な謝罪を行っている。