読売、「性奴隷」表現を謝罪 “朝日とは逆方向”、“安倍首相の代弁”…海外メディア
読売新聞は、英語版の『The Daily Yomiuri』(現『The Japan News』)で、戦時中のいわゆる「慰安婦」を、長年に渡って「sex slaves(性奴隷)」と表現したことを謝罪した。28日付の朝刊と『The Japan News』に謝罪文を掲載した。ニューヨーク・タイムズ(NYT)、英・ガーディアン紙などの英語圏のメディアのほか、韓国の朝鮮日報、中国国営新華社通信などもこれを報じている。
◆「慰安婦」では外国人に理解しがたいと思った
謝罪文によると、1992年から2013年にかけ、『The Daily Yomiuri』の97の記事で「sex slaves」や「その他の不適切な表現」が使われた。読売本紙の記事の翻訳と『The Daily Yomiuri』の独自記事の両方で見られたという。
読売は、「sex slaves」という言葉を直接使用した記事が85本、「慰安婦」を「日本軍によって売春を強制された女性たち」という「不適切な表現」で説明した記事が12本あったとしている。また、1993年の「河野談話」の「官憲等が直接これに加担したことはあった」という部分を、「軍当局による強制連行を認めた」と誤解を招く形で英訳した例もあったという。
同社は、「sex Slaves」を用いた理由を、「慰安婦(comfort women)」では外国人読者には理解し難いと考え、一部の海外メディアの表現を引用した結果だとしている。今回は、それを誤った認識に基づく誤解を招く表現だったと謝罪した。一方、日本語版では一貫して「慰安婦」を使っており、「性奴隷」を用いたことはないとしている。
◆読売は安倍首相の代弁者?
NYTは、読売新聞を「保守系日刊紙」と紹介したうえで、今回の謝罪を「日本の戦時中の行為に対する不当にネガティブな見方を正すキャンペーン」の一環だとしている。また、読売新聞社の渡辺恒雄会長は「安倍首相の盟友」であるとし、「読売の記事に安倍政権の見解が反映されていると見るのは間違いではない」という上智大学の中野晃一教授(政治科学)のツイートを引用している。
ガーディアン紙も、読売を「与党自民党の熱烈な支持者」と表現し、「sex slaves」という表現によって、「性奴隷化が戦時中の日本の公式な政策であったという誤った印象を作ってしまった」という読売の“反省の弁”を、「保守系政治家と歩調を合わせているかのようだ」と記している。
また、このニュースを伝える海外各紙はいずれも、朝日新聞が8月に、いわゆる「吉田証言」を虚偽と認定し、関連する慰安婦報道を撤回した件にも触れている。その中でガーディアン紙は、読売は強制性そのものを「誤った認識」として謝罪しているのに対し、朝日の記事撤回は、「政府と軍による強制性があったという彼らの主張を無効とするものではない」と、両紙の方向性の違いを強調している。
◆朝鮮日報「韓国の怒りを混ぜ返す」
朝鮮日報(英語版)は、慰安婦について、「第二次大戦中に日本軍が支援する売春宿で働かされていた最大20万人の女性たち」と表現する。そして、今回の件を、読売が「婉曲的な『慰安婦』の代わりに『性奴隷』という表現を使ったことを謝罪した」と伝えている。
同紙も、読売のスタンスは、安倍政権の「日本の戦時中の行為に対する認識を改める動き」に連動していると見ている。そして、今回の動きが「韓国の怒りを混ぜ返すだろう」と記している。
新華社は、東京都内の『アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」』の“スタッフ”の声を紹介。それによれば、「元慰安婦の権利を守るために戦っている」というこのスタッフは、新華社の記者に対し、「読売のいわゆる“謝罪”は、戦時中の日本軍の売春宿にいた女性たちが、まさしく『性奴隷』の状態に置かれていたという事実を完全に無視している」と批判したという。