ハラル対応の鯨肉、高島屋の礼拝室… 進む日本のイスラム観光客受け入れ体制
政府が2020年東京オリンピックに向け、訪日観光客の増加を目指していることもあって、今日本ではイスラム教徒の観光客に向けた対応が進んでいる。
◆増える東南アジアのイスラム観光客
AFPによると、2013年にマレーシア、タイ、インドネシアへのビザ緩和もあり、インドネシアからの観光客は前年比37%増、マレーシアからは21%増となった。いずれもイスラム教徒の多い国である。
クアラルンプールから日本を訪れたあるグループは、日本でハラル(イスラム教で許可されている)の食事を得られるかわからなかったため、念のため朝食を持参でやってきたとのことだ。だが食事に関しては思いのほか不自由せず、ごはんと天ぷらの昼食を楽しむことができたという(AP)。
しかし、そんな中にも難点があった。1日5回礼拝をしなければならない彼らにとって、礼拝が出来る場所が足りないのだ。やむなく、セブン・イレブンの駐車場の裏で断行したこともあったという。
◆拡大する対応策
マレーシアの食品会社ブラヒムズの代表であるバダウィ氏は、まだ日本はイスラム教徒の観光客にとって不安要素が多く残り、対応が十分ではないとAFPに語っている。
しかしそれも今後は改善に向かうだろう、と観光業界関係者は言う。APによると、デパートの高島屋は東南アジアからのイスラム客増加に伴い礼拝室を開設したという。室内には、メッカの方角が示されているとのことだ。
またインドネシア出身で福岡在住のAgung Pambudiさんが開発した『Halalminds』というスマホアプリは、日本でハラル商品が買える場所やハラル食が提供されているレストランを探すことができるという。Pambudiさん曰く、漢字を読めないと材料表記を理解できない、という不便が開発のきっかけになったという。
◆日本におけるイスラムとは
昨年は、日本の捕鯨船がハラル認証を取得した。鯨肉をハラル食として提供しようという試みだ。さらにはハラルの米や醤油の輸出も準備段階にあるという。このように拡大するハラルビジネスだが、その一方でもう少し需要の母数が増えないと商売としては難しく、経過を見守る必要がある、との声も聞かれる。
日本にとってイスラム教は、やはり仏教やキリスト教よ比べるとまだまだ馴染みのない世界で、さらには2001年9月11日のテロ以来、悪い印象が先行しているとアルジャジーラは伝えている。
しかしイスラミックセンタージャパンのムーサ・オマル博士は9月11日の事件を「イスラム外の世界と対話するきっかけになった」と位置づけているようだ。さらに博士によると、実は日本とイスラム教との関係は意外にも古く、さかのぼること8世紀には既にイスラムの知識とムハンマドの予言が見受けられたという。
本腰を入れたイスラム教の普及活動は、明治時代に日本が中東地域との貿易を始めて以来深まったという。今起きている動きは、その現代版といったところ、と同メディアは伝えている。
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