小笠原の中国船サンゴ密漁、日中首脳会談の障害に? 台風迫る中、動向に海外も注目

 小笠原諸島近海で中国漁船がサンゴの密漁を続けるとみられる中、台風20号が迫っている。台風は今日にも小笠原諸島・伊豆諸島に最接近する見込みだ。朝日新聞によると、漁船約200隻の大半は小笠原南東の領海外に避難したが、13隻が5日夜、小笠原・母島沖の領海に緊急に入域したという。

 海外メディアは、本件の影響について注目している。

◆中国のサンゴ密漁船の動向
 日本の赤サンゴは中国では宝石として価値が高く、1グラム18万円の値段がつくとのことである(毎日新聞)。

 岸田外相の説明では、中国船籍によるサンゴの密漁が確認されるようになったのは9月中旬ごろからとのことである。船の数は増加し、10月30日には212隻が確認されている。この動きに対し、日本政府は中国政府に対し「適切で効果的な対応」を求めた。

 横浜海上保安部は、10月は小笠原諸島近海の日本の領海または排他的経済水域で5人の中国漁船船長が逮捕されたと発表した。さらに10月17日には、石垣島の排他的経済水域でも船長が逮捕された。日本政府は、11月4日に違法な漁の疑いがある中国人6人を逮捕、日本の領海から退去するよう警告した(以上ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

 このような日本の動きに対し、中国外務省の華春瑩報道官は「我々は事態の深刻さを認識しており、中国漁船に『法律に従い操業するよう』警告した」と発表した。しかしその一方で、日本側に対し「取締りは丁寧に、理性的、抑制的に行い、事態を適切に処理するよう望む」と注文をつけたと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、ブルームバーグは報じている。

◆台風20号が小笠原諸島・伊豆諸島に接近
 台風20号が小笠原諸島・伊豆諸島に近づいており、今日6日にも最接近する見込みである。海上保安庁は漁船に対し、速やかに島から離れるよう呼びかけを強めている。日本国内では、中国漁船が台風を避けて小笠原諸島等の港に避難、船員が上陸するのではないかとの懸念が広がっている。

 これに対し、日本政府・太田国土交通相は「沿岸での立ち入り検査を行い、上陸を阻止する」とし、江渡防衛大臣は「海上保安庁、警察がまず責任を担うが、必要であれば、自衛隊の配備もありうる」としている(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

◆日中首脳会談への影響は
 しかし、最も影響が心配されるのは、来週実現の可能性が取り沙汰される日中首脳会談である。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「今のところ、サンゴ密漁は両国の深刻な争いの種にはなっていないが、両国の首脳会談の可能性が見えてきた段階での今回の出来事は、頭痛の種である」と報じている。

 英フィナンシャル・タイムズ紙でも、これまでの経緯を踏まえながら、日中首脳会談実現への影響について強い懸念を報道した。日本は実現に自信を持っている関係者もいるが、一方で残された課題が存在し、中国側が設定した条件に同意できそうにないとする者もいる。 中国側は、尖閣諸島問題は残るが、安倍総理が靖国神社を参拝しないと明言するよう要求している。サンゴ密漁についても岸田外相は『サンゴ密漁について中国は理解を示したが、密漁阻止の具体的方策を求める』と述べており、今のところそれは見えてこない」と報じている。

 来週に迫ったAPECで数年来の懸案事項であった日中首脳会談が実現し、日中関係が改善に向かうのか、しばらく目が離せないようである。

Text by NewSphere 編集部