“仕事と家庭、なぜ両方を選べない?” 日本の女性の労働環境に、海外から疑問
日本政府は、安倍晋三首相自身もよく口にするように、盛んに女性の社会進出を勧めている。しかし、日本人女性の多くは、人生における選択肢は限られていると感じているようだ。
最近、グーグルによって行われた調査で、日本は他のアジア諸国に比べ、仕事と子育ての両立に対する社会の支援が少ないと女性たちが感じていることがわかった。
◆家事のほとんどは“私”
調査は、アジア女性、約5600人を対象にインターネット利用についてインタビューが行われた。主な質問は、インターネットが仕事や家庭で彼女たちをどう助けているか。パートナーや雇用主からどのようなサポートを受けているかといったものだ。
デジタルメディア『Quartz(クオーツ)』は、この調査結果を取り上げた記事に「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)は多くの日本人女性にとって、空虚なスローガン」とのタイトルをつけ、以下の数字を示している。
「未来は開かれている。進むことのできる道は多く様々だ」との内容に、「同意」と答えた女性は、フィリピン90%、タイ89%、インドネシア86%、インド80%、オーストラリア74%、韓国65%、日本60%だった。また、「母親となった働く女性に対して、社会が支援してくれる」に対しては、仕事を持つ女性のうち「同意」が韓国74%(ただし仕事を持たない女性では31%)、オーストラリア62%、日本38%と、これもまた日本の数字は低かった。
同調査によると、日本人女性が家事にかける平均時間は1日当たり2.3時間だった。家事の64%、子供の世話88%は、“私”が担っている、と答えたという。おそらくこのことが理由で、3分の2の女性は子供ができると仕事を辞めるのだろう、とクオーツは結論している。
◆本当に必要な企業の支援とは?
2013年、安倍首相は、職場復帰したい女性を支援する“女性に優しい”政策を打ち出した。しかし、クオーツによると、日本人女性が本当に必要としているのは、安倍首相の提唱する母親への長期の育児休暇ではなく、父親への育児休暇の延長だという。男性が育児を分担してくれれば、女性の職場復帰を早めることもできるからだ。また、一度育児を経験してもらえば、男性からも理解を得やすい、と同メディアは指摘した。
デイリー・テレグラフ紙は、「仕事か家事か。なぜ日本人女性はいまだにその選択を迫られるのか」と題した記事を掲載。問題の核は、伝統と酷い企業文化、育児施設の不足だという。子供を預ける場所がなければ、両親が働きに出ることは不可能で、そのことが年功序列、効率よりも長い労働時間を強いる職場環境を作り出している、としている。
また、同紙は、企業に就職する際には、男性社員と同様の役割を担う総合職と、昇進の望みが薄い一般職があるが、多くの女性は後々子供が出来ることを想定して、一般職を選択すると指摘。「ウーマノミクス」の提唱者、松井キャシー氏は、このことが女性のキャリアに影響しているとみている。「女性たちは、長く職場にとどまることができないと考え、キャリア構築の機会が非常に限られてしまう後者(一般職)を選びがちだ」(テレグラフ紙)
文化に根深い原因
一方、ロサンゼルス・タイムズ紙は、地元米ロサンゼルスが移民の多い地域であることもあって、そのことによる文化の違いに言及した。同紙は、日本は移民政策が厳しく、多くの西欧諸国のように子供の面倒をみる労働者の数が少ない。日本では、乳母に外国人を雇う習慣もない、と報じている。
さらに同紙では、大和総研の河口真理子主席研究員が、女性の社会進出について、文化的に大きく根を張った問題だ、としている。例えば、日本の男性は育児や家事に関して、女性を「支える」という考えで、同等の役割を担おうとしないと指摘した。同氏は、いまだに日本社会の「性的役割の認識の溝は大きい」と述べ、政府による改革の進行が「あまりに僅かであまりに遅すぎる」(ロサンゼルス・タイムズ紙)と批判した。
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