“天皇陛下に、靖国神社を参拝していただきたい” 福岡遺族会、A級戦犯分祀を求める
戦没者遺族団体の福岡県遺族連合会は、27日、靖国神社に合祀(ごうし)されているA級戦犯14人について、分祀(ぶんし)を求める決議を採択した。同様の提案はこれまでにもなされてきたが、遺族会の決議としては、これが初めてだという。
欧米メディアはこの提案について、実現すれば、日本と中韓の関係改善をもたらす可能性があるものだと報じている。
◆決議は何を目指したもの?
福岡県遺族連合会は、27日、福岡市内で県戦没者遺族大会を開催した。毎年開催されているこの大会、今年はおよそ1300人が参加した。大会では同連合会の今後の活動方針が決議されたが、そのうち1項目が、A級戦犯の分祀の実現を目指すという内容のものだった。「天皇・皇后両陛下、内閣総理大臣、全ての国民に、わだかまりなく靖国神社を参拝していただくため」というのがその理由だ。
現在、同連合会の会長は、元自民党幹事長の古賀誠氏が務めている。古賀氏は2002~12年、日本遺族会の会長を務めた。日本遺族会は、各都道府県の遺族会の上部団体でもある。古賀会長は、日本遺族会の会長在任時、A級戦犯の分祀を要求したが、遺族会内に意見の相違があり決議案採択はならなかった、と朝鮮日報は伝えている。
◆靖国は日本と中韓との不和の原因、と欧米メディア
英タイムズ紙および米ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は、靖国神社が、日本と中国・韓国との間の不和の原因になっていることを伝える。
タイムズ紙は、靖国神社は中国と韓国の憤激の源であり、日本の中でも深い分裂の原因である、とする。靖国神社は、日本の軍国主義が復活するのではないかというアジアの懸念の象徴となっているという。
日本の政治家の靖国神社参拝が、中国と韓国にこれほど大きな反発を引き起こす主要な理由は、そこにA級戦犯14人が合祀されていることだと、両メディアは指摘している。
◆中韓はA級戦犯の合祀を問題視
A級戦犯は、戦後の連合国による東京裁判において、通例の戦争犯罪ではなく「平和に対する罪」などによって裁かれた。その罪とは、日本に侵略戦争を遂行させたことなどである。14人のA級戦犯は、1978年、靖国神社の宮司によってひそかに合祀された、と両メディアは伝える。報道により、それが一般に知られるところとなったのは、翌1979年のことだった。
NYT紙によると、その後、1980年代より、中国と韓国が、日本の政治家の靖国参拝に対して不服を唱えるようになった。A級戦犯の合祀のせいで、中韓では靖国神社が、日本に戦時の悪行に対する悔い改めが欠けていることの象徴になっているという。日本の政治家の靖国参拝は、戦時の指導者と、開戦するという彼らの決断を崇敬していると見られる可能性があると、同紙はほのめかしている。
◆遺族会から提案されたのは意外なこと?
タイムズ紙の報道によると、福岡県遺族連合会は、靖国神社に対し、A級戦犯の「合祀を取りやめ」にし、この神社への中韓の反感の主要な原因を取り除いて、日本の指導者らによる参拝がもっと受け入れられるようにするよう求めているという。
NYT紙は、この提案が遺族会からなされたことに意外さを見出しているようだ。27日の決議は、日本の人々を驚かせたが、遺族会は、戦没者の栄誉を称えるために(政治家が)靖国参拝することの熱心な擁護者だからだ、としている。タイムズ紙は遺族会を、高齢の超保守派が牛耳っている強力な団体だと述べている。
◆「分祀は不可能」と靖国神社
しかし、このA級戦犯の分祀の提案には、大きな困難が待ち受けているようだ。靖国神社が、そのような「分祀」は不可能であると主張しているのだ。タイムズ紙、NYT紙、そして朝鮮日報のいずれもがその点に触れている。
そもそも分祀とは、「本社と同じ祭神を別の新しい神社に祀ること」(広辞苑)である。合祀されたことによって、A級戦犯もすでに他の御霊と一体の神となっている。「教義上、一度合祀したら分祀できない」というのが靖国神社の主張であり(朝鮮日報)、それは水たまりから、ある特定の一滴の水を取り去ることができないのと同様だという(タイムズ紙)。
なお、朝鮮日報の報道は、客観的な記述で、ただの日本の国内ニュースに過ぎない、という雰囲気だ。そこに批判的ニュアンスは一切見られない。