東京都のホームレス過去最少 “問題改善していない”と海外メディアは厳しい報道
東京都が今年の8月時点で、ホームレスの人口が過去最低の1,679人をマークしたと発表。これを受けて海外のメディアがその背景を分析。ウォール・ストリート・ジャーナルは好意的に受け止めているが、アルジャジーラはバラ色の見方を否定している。
◆東京都の路上生活者の人数が過去最低に
東京都に発表によれば、都内のホームレスの人数が今年8月の調査結果で、2002年に調査を始めて以来最低の1,679人となった。2004年の6,731人をピークに減少が続いているということだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、都の担当者や東京都の山谷で日雇い労働者などの支援を行うNPO法人「山友会」の担当者の言葉を引用して、この減少の背景には、都の路上生活者への自立支援策が効をなしたこと、また高齢により健康に問題を抱え、路上生活をやめて生活保護などを受ける人が増えていることを伝えている(10月17日)。
◆高齢化するホームレス
ホームレスの高齢化問題については、以前から海外メディアでも取り上げられている。2013年の3月1日のロイターがその問題について、詳しく取り上げている。
64歳の女性ホームレスを取り上げつつ、「55歳以上のホームレスは、2003年の58.8パーセントから2012年に73.5パーセントへと急増」したことを伝えている。日本の社会も高齢化しているように、ホームレスも高齢化しているのだ。
長引く不況で、50代や60代になってから失業し再雇用ができずにホームレスになることが多く、また高齢でホームレスになるとホームレスの頼りである日雇いの職も若い世代との競争となり、ホームレスが長期化することを指摘。
またロイターは、厚生労働省が発表した「全国のホームレスの人口はこの5年間あたりで急減し、2007年の18,564人から2012年には9,576人へとなった」ことを引用。
しかし、視認されるホームレスの数は減ってきているものの、実際には公共の場から消えただけで、ネットカフェなどに移ったためかもしれない、という政府やNPO団体の認識を伝え、ホームレスの人数の減少が、決して事態の好転を表しているとは限らないことを伝えている。
◆「バラ色」の見方を否定するアルジャジーラ
アルジャジーラは、ホームレスの人数が過去最低という東京都の発表を受けて、10月26日の記事でさらに深くホームレス事情を取り上げている。
まず、テンプル大学ジャパン、アジア研究学科のジェフ・キングストン氏の「突然、すべてがバラ色になっているといった見方には、警戒感を感じさせる」という言葉を引用。
ホームレスを支援する雑誌を刊行している「ビッグイシュー日本版」の担当者の言葉「人数が激的に減ってきているとは思わない」や、余った食料を必要としている人に配布する団体「セカンドハーベスト・ジャパン」の「人数は減っているが、貧困や経済的保障の欠如というより大きな問題を考慮していない」との言葉を引用して、
実際にホームレスの人々と接している人たちが、都の発表をホームレス問題の改善とは受け止めていないことを伝えている。
また、「日本の労働力のうち、不安定な雇用状況で働く労働者の割合は、1980年代の15パーセントから38パーセントに増えた」という、テンプル大学ジャパンのキングストン氏の言葉を引用して、経済的な苦境に立たされている人の数は増えてきていることを指摘。
路上生活をする人たちの人数は減ったものの、安定した職や定住できる住まいを持たない人の数は、実際には増えているかもしれないという状況を示した。
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