高齢化のせいで、日本だけCD好調? “CD天国”は幻想と米誌指摘
先日ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)が報じた日本のCDセールス事情に対し、反論の声があがっているようだ。
元となったNYTの記事は9月16日付のもので、世界的にCDの人気が落ちて行く中、日本では今なお楽曲売上の85%をCDが占めていると伝えている。その背景として、ダウンロード販売の参入に不寛容な音楽業界の事情、AKBに代表されるような関連プレミアム品との抱き合わせ商法、そして日本人特有の「コレクター指向」などがあると指摘されていた。
しかしこの論に意義を唱えたのが米フォーチュン誌だ。日本はCD天国などではない、と否定し、音楽業界の手本として参考にするのは馬鹿げていると訴えている。
【高い売上=好調とは言えない】
NYTの記事は、日本でCDが盤石であることの顕著な例として、すでにアメリカには一軒も存在しないCDストアのタワーレコードが、日本にはまだ85店も存在し、年5億ドル(約500億円)の売上があることを挙げていた。
しかし、売上が多いことイコール健全なビジネスを表すわけではない、とフォーチュンは言う。実際、タワーレコードがアメリカに存在した最後の年となった2005年でも、まだ全米で89の店鋪を運営し、4億3000ドル(約430億円)の売上があった。それが翌年にはすべて跡形もなくなったのから、日本でもこの数字が安泰の証になるわけではない、と同誌は言う。事実、日本でもCDの売上は確実に下落傾向にあり、昨年からは17%減少しているという。
【レンタルCDという特殊な習慣】
日本で楽曲のダウンロード購入が伸びない理由として、音楽業界が参入に前向きでないことからCDの売上が守られている点はNYTも述べている。日本では、世界最大のオンライン楽曲ストア『iTunes』ですら、未だに買える曲が少ない。
しかし日本でダウンロード購入が振興しない理由はそれだけではない。「レンタルCDというものが著作権的に許可されている」という日本独自の事情も一因、と同誌は分析する。
レンタル店でCDを借りてきて、自分のメディアにコピーする。料金は購入の10分の1で済む。だったら買うより借りた方がいい。これは日本ではおなじみの習慣だが、アメリカでは違法にあたるという。
【CD売上を支えているのは高齢層】
最後に、日本でもいずれはCDの売上が行き詰まる理由として、日本の人口事情が挙げられている。
結局のところ、CDの売上はデジタルに馴染みの薄い高齢層が占めていると同誌は指摘する。つまり、いま日本でCDの売上が高いのは、ただ単に「世界のどこよりも高齢化が進んでいるから」であるだけだという。
だからといって、日本でも音楽市場全体が縮小していることに変わりはない。オンラインで曲を聴ける利便性、しかもYoutubeなら動画付きでその上無料だ。これに敵うものはないのに、なぜ今さらCDにお金を払う必要があるのか、という疑問は日本でも高まりつつある。日本では、音楽業界の保護と世界随一の高齢化という2つの要因によりしばらくはCDの売上を保持するかもしれないが、結局のところいずれは迫りくる宿命を避けられない、と同誌は述べている。