「中国に悪印象」日本人は93%に悪化 「歩み寄り必要」と中国紙提言
日本のNPO法人『言論NPO』と中国日報社は9日、「第10回日中共同世論調査」の結果を発表した。この調査は、2005年から10年間毎年行われている。7~8月に日本1000人、中国1539人から回答を得た。
【「強硬な中国の印象」を報じる日本紙】
日本紙は、総じて、日本国民がなぜ中国に良い印象を持たないかとの回答と数字を取り上げている。
調査によると、日本人の93%(前年比2.9ポイント増)が中国に良くない印象を持っていると回答。これまでで最も高い数字となった。
また、相手の印象が良くない理由として、最も多かったのが、「国際的なルールと異なる行動をする」の55.1%。「資源の確保で自己中心的に見える」が52.8%だった。「尖閣諸島をめぐる対立」を挙げた者は、50.4%とそれらを下回った。
読売新聞は「日本の対中認識悪化は、東シナ海に加え、南シナ海など周辺地域における、中国の力を背景とした行動への懸念が反映された」ためだろうと報じている。
【淡々と報じる中国メディア】
一方中国国営各紙の論調は意外なものだ。
人民日報(英語版)は、日本に良くない印象を持つ中国人は86.8%と、最悪だった2013年よりわずかだが、改善したことを冒頭で取り上げている。また、日中の数字を比較して、「中国に良い感情を持たない多くの日本人と比べ、中国人は割合、理性的だ」との意見を取り上げている。
また、日中関係について何を最初に思い浮かべるか、との質問については、日本側の答えが1位大気汚染、2位食の安全、尖閣諸島の領有権問題は3番目だったことを報じている。そして、新華社通信は中国人がなぜ日本に悪い感情を抱くかとの質問には、64%の中国人が、中国の領有していた尖閣諸島を国有化したからが主なものだった、と説明的な数字を挙げている。
中国新聞網(英語版)は、日中両国民が国家間の関係を改善するため、対市民外交(政府と民間が連携しながら、広報や文化交流を通じて外国の国民や世論に働きかける外交)を支持している、と報じている。同メディアでは、東京大学の高原明生教授が、中国人の日本への印象がわずかに改善した理由を指摘。「最近、多くの中国人観光客が日本を訪れている。良い印象を持って帰国するのだろう」
日本政府観光局(JNTO)によると、2014年上半期に、中国本土から日本を訪れた中国人旅行者の数は、前年比88.2%増と100万人を超えたそうだ。相互理解が深まる兆しとして、日本の情報を直接日本のメディアから得たと答えた中国人の割合が増加し、23.7%(2013年は14.3%)となったことも取り上げている。
読み進んでいると、どれも中国メディアであることを忘れてしまいそうなくらい穏やかな内容だ。
【中国政府の狙いは?】
人民日報は、言論NPOの工藤泰志の発言を取り上げた。「これまでの日中関係の浮き沈みに、両国の国民感情もまた揺れ動いている。(国どうしの)関係が、(国民感情の)対立を悪化させているようだ」「健全なやり方で対話と情報交換のための努力がなされるべきだ」「中国人にとっても、日本人にとっても、両国政府間での交流と信頼が欠如していると気づいたことは大きな意味がある」
新華社通信は、今年の調査でも相手に対する感情は依然悪い数字だが、両国の国民がお互いの国の間にある問題にとても関心を持っていることがわかった、と報じている。約80%の日本人と70%の中国人は、国民感情の悪化は、「望ましくなく心配だ」あるいは「問題であり、解決の必要がある」と考えている、との数字も挙げた。
さらに、2012年から開かれていない日中首脳会談を半数以上の両国民が必要だと考えている、と同紙は結んでいる。また、中国新聞網(英語版)も歴史問題や領土問題はあまりに複雑ですぐに解決されないだろう。関係の改善のためには、まず、主張があまり対立していない問題から手を付けるべき、と歩み寄ることを提案する意見を取り上げている。
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