延長50回の高校軟式野球、アメリカでも大きな話題に 選手を讃え、運営側には批判

 兵庫県で行われていた、第59回全国高校軟式野球選手権大会の準決勝、広島の崇徳高校と岐阜の中京高校の対戦が大きな話題になっている。

 28日に開始した試合は両チーム無得点のまま進み、4日後の延長50回表に3点を奪った中京が勝利した。この日、会場となった兵庫県の明石トーカロ球場には多くの取材陣やファンが詰めかけたことも、注目度の高さを物語っている。

 試合をめぐっては、好勝負に対する賛辞、1人で試合を投げ切った崇徳・石岡選手、中京・松井選手の両投手へのねぎらいの声が上がった。その一方で、選手たちの体調を憂慮する意見や、54回まで試合が続けられる規定を疑問視する見方もあるようだ。

 海外メディアも、この前代未聞の長丁場を大きく報じている。大リーグで厳しい球数制限が設けられているアメリカでは「信じられない」「バカげている」といった批判的な論調も見られる。

【たとえ軟式球を使っていたとしても700球の投球には驚き】
 アメリカの全国紙のひとつUSAトゥデイ紙は冒頭で、この大会が軟式球で行われていることを説明。日本で「ナンシキ」と呼ばれるゴムのボールは通常のボールよりも軽く、飛距離も出ないため、得点が入りにくいと伝えている。その上で、中京の松井選手が709球、崇徳の石岡選手が689球で50イニングを完投し、この間無得点が続いた試合について「実に驚異的だ」とした。

 スポーツ専門サイトBleacher Reportも、一般にゴムの軟式球を投げることは腕へのストレスが少ないとしながら、「しかし、そのことは彼らが2人合わせて1400球近くを投げたことが、どれだけ印象的か(あるいは、少しぞっとする)という思いを減らしはしない」と驚きを隠せない。

 米ヤフースポーツは先発ピッチャーの2人が、「マラソン」のような試合を最後まで投げ抜いたことを「驚くべきことに、そしてバカげたことに」という表現で伝えた。

 各メディアに共通して見られたのは、4日にわたる試合を投げ切った投手への素直な驚きと賛辞の姿勢だ。

【大会規定や監督の無責任さを批判する声も】
 一方、これほどまでに長い試合が行われたことに関し、大会規定や投球を続けさせた監督を疑問視する見方も。

 Bleacher Reportは、松井選手の「今までで一番体がつらかったけれど気持ちを前面に出した」「仲間が3点も取ってくれたので、最後は楽に投げられた」といったコメントを伝えながら、「このような試合がアメリカで行われていたら、疑いなく異なる展開になっていただろう」と分析。曰く、投球数は議論の中心になり、たとえ軟式球だとしても高校生が150球を投げたはずがない、ということだ。

 ヤフースポーツも同様に石岡選手の「疲れは昨日も一昨日もあった。きょうは自分から(志願して)投げさせてもらった」というコメントを引用。そして「私たちは、(選手の)競争的な気持ちを高く評価するが、4日間で700球近く投げることが良い経験だということには賛成しない」と反対姿勢を見せている。例え石岡選手のように本人が志願したとしても、「監督がそうした起用を認めることは行き過ぎで無責任だ」と強く批判した。同時に1日15回でサスペンデッドとなるとはいえ、このように試合が続けられることは大きな問題だと主張している。

【54回終了ルールが受け入れられない理由】
 それぞれのメディアが、54回までで勝敗がつかない場合は抽選で勝者を決める、というルールにも言及した。

 試合をめぐる批判よりも、選手への驚きや賛辞を前面に出したトゥデイ紙の記事は、抽選での勝者決定については「このようなスペクタクルを終わらせるには、ひどい方法のよう思える」と疑問を提示。

 ヤフースポーツは、54回という数字には何の根拠もないが、そこにたどり着くには「あまりにも多くの努力」が必要だと否定的に伝えた。そして、「たぶん、投球数は、若いピッチャーがグラウンドに倒れ込むことなく、勝者を決定する良い方法かもしれない」と代替案を提案している。

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Text by NewSphere 編集部