日本はイスラムのユートピア? ハラル対応などで評価 欧米も学ぶべきとの主張も
イスラム教では、豚、アルコールなど口にしてはならない食品を「ハラム」と呼ぶ。その逆は「ハラル」と呼ばれ、日本語では「合法」という意味だという。
いま日本では、ハラルに注目する企業が増えている。イスラム教徒の留学生や観光客を広く受け入れ、商機を増やすのが主な目的であるようだ。
【イスラム・フレンドリーな国、日本】
東京はイスラム教というマイノリティが心地よく過ごせるよう努力をしている、とインドのイスラム教徒向け情報サイト『ummid.com』は伝えている。いくつかの大学の学食や、ホテル、レストランでハラルの食事を提供しているほか、100を超えるイスラム系協会があり、空港や企業などにある礼拝室のガイドツアーもあるという。
明確な数こそ把握できていないが、日本にいるイスラム教徒は10万人をゆうに超えるとのことである。「日本では派閥の問題などがない。スンナ派とシーア派の争いもない。警察も我々の側についてくれるし、人々もイスラムに対し心を開いてくれている。もし何らかの偏見があるとしても、それは西洋からの影響でしかない」とイスラミックセンター・ジャパン(世田谷区)のムーサ・オマル氏は語っている。
日本が「イスラムの理想郷」となり得るなど、いったい誰が予想できただろう?各派の対立や西洋からの干渉といった問題から遠く離れた地で、アジア、アフリカ、中東からの駐在員が混在する中、日本のイスラムは平和な新しいあり方として世界に示すブランドとなり得るかもしれない、との期待を同メディアは寄せている。
【ハラル認定とは】
ハラルの食品は、豚ほか禁忌の動物以外の肉であっても、加工や調理および屠殺や流通に関してまで一定の作法が定められており、遵守されていないものについてはやはり違反となってしまう。そのため、単純に材料表示だけで判断できないのが難しいところである。
その解決として広まったのが「認定制度」だ。ハラルのお墨付きを表示することで消費者に安心してもらうのである。その中心となっているのが、マレーシアだという。ハラル食品に注目する企業にとって、マレーシアはスタート地点となる、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)は伝えている。マレーシア政府はハラル食品の認定40年の実積でイスラム社会の信頼を得ているという。
「将来中東でビジネスを行うなら、マレーシア政府のハラル認定を得ることは非常に重要だと思う」と三菱商事の担当者は語っている。同社は、クアラルンプールでインスタントコーヒーの製造販売を始めるため、コロンビア最大の食品会社『グルポ・ヌトレサ』の子会社『コルカフェ』と折半出資で合弁会社を設立したばかりだ。
【狙うは巨大なイスラム市場】
ウォール紙によると、世界のイスラム人口は16億人にのぼる。実に中国の総人口より多い。
日本がイスラム市場に着目した理由のひとつに、国内の人口が減少の一途を辿っていることがある。味の素株式会社は成長が望めない国内から海外市場へと目を向け、既に昨年度の国内/国外利益比率は50/50となっている、とAFPは伝えている。
もうひとつの理由に、中国との関係悪化がある。経済的損失を補うべく、政府は東南アジア諸国へのビザ規制を緩和、これがマレーシアやインドネシアからの観光客を増やした。両国とも、多くのイスラム教徒を抱える国である。
【今後に期待か】
イスラム教徒向けの食事提供に関するセミナーは、昨年日本各地20ヶ所で開催されたという。2020年のオリンピックに向け訪日観光客2000万人達成を目指していることも、イスラム・フレンドリーな環境を促進する力になり得る、とAFPは伝えている。
日本で焼肉店を営むロジャー・B・ディアス氏は、自身はカトリック教徒のスリランカ人だが、商売はハラル対応にシフトした。しかし、イスラム対応の商売は、もう少し母数が増えないと現時点では難しい、とディアス氏は同メディアに語っている。
その主な原因は、アルコールが禁忌であることだ。やはり「お酒なしでの商売は厳しい」と同氏は言う。現在、同店でのイスラム信徒とそうでない客層の比率は半々程度で、非イスラムの客には酒類も提供しているとのことである。
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