「外国人は生活保護対象外」判決、海外が批判 “税金払っているのになぜ?”

 日本国内の外国人住居者は、たとえ永住資格を持っていても生活保護の対象とならないとする判断を最高裁判所が示した。憲法でも生活保護法でも「国籍」についての言及がなされていない現状で、どのような判断が下されるのかが、注目されていた。

 現在、日本に住む外国人が、生活に困窮した場合、人道上の観点から、自治体の裁量で生活保護が支給されている。

【裁判の経緯】
 訴えを起こしていたのは、大分市に住む82歳の女性。この女性は、日本で生まれ育ち、生涯を通じて税金を納めてきたという。2008年に大分市に対して、生活保護の申請を行ったが、十分な貯蓄があるとして認可されなかった。これに対して、女性は市に取り消しを求め提訴。市の裁量で生活保護の受給は認められたが、永住外国人にも法的な受給権があるとして争ってきた。

 2010年、大分地方裁判所での第一審は女性の訴えを退けたが、福岡高等裁判所が、生活保護法では永住外国人も公的援助を受けられる権利があるとして、2011年に訴えを認めた。今回の「法律が保護の対象とする国民に外国人は含まれない」とする最高裁の判決は、それを覆すものとなった。

【海外メディアの声】
 この判決に対し、外交ニュースサイト『ディプロマット』は、長期外国人住居者あるいは、永住外国人にとっては深刻な問題だと指摘。税金を課せられている人間が、支払った税金でまかなわれた資金に対し、必要な時に、法的手段を主張できないのはおかしいのではないか。また、セーフティーネットが認められなければ、立場の弱い外国人がさらに孤立し、将来的には社会不安につながりかねないとしている。

 香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は、この判決は明らかに、地方自治体が外国人住居者への支援を停止できる法的権利を与えるものであり、多くの自治体が財政危機にある現在、その権利を実行する危険性が高くなるとして、強く批判している。ただ、日本のメディアや自治体関係者は、生活保護に関する規定を変える考えはないとしている。

【国内の声】
 国内メディアでは今回の判決について、安倍内閣が推し進める経済政策にブレーキをかける恐れがあるのではないか、という声が上がっている。成長戦略の一環として、海外から有能な人材を呼び込もうとしているが、法的な保障がない状態で税金だけ支払わされるのでは、日本に来ようとする外国人がいなくなるのではないかと指摘している。同様の指摘は海外メディアでもなされている。

 人口減少に歯止めがかからない日本にとって、労働力、税金納入者の確保は重要課題であるだけに、今回の判決がどの程度影響をあたえるのか、注目される。

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Text by NewSphere 編集部