“あたりまえ体操”で笑わせるロボ登場 笑いの科学研究は興味深いと海外注目

 今月開かれた「ロボティクスとオートメーションに関する国際会議(ICRA) 2014」で早稲田大学の高西淳夫教授らが、開発中のロボット「KOBIAN(コビアン)」に人を笑わせる機能をプログラミング中であることを発表したことが話題となっている。

 2009年に発表されたコビアンは親しみやすい表情や行動で人々を笑わせ癒すことを目的とした介護用ロボットだ。これまで科学技術を活かして様々な作業をこなすよう開発されてきたロボットに比べて、その目指すところは実務的な次元を超えているといえるだろう。人間に対する心理的な働きを身に付け真の人工知能を実現することはできるのであろうか。また、人工知能とは一体なんなのか。海外の業界メディアが注目している。

【コビアンは面白いのか?】
 まず、顔に多数の電動式モーターを組み込んだコビアンは「喜び」「悲しみ」「驚き」「怒り」「恐れ」「嫌悪」「困惑」など多彩な表現力の持ち主だという。その表現力を駆使し高西チームがプログラミングしたネタを披露するコビアンの映像がインターネットにあげられている。

 感想はどのメディアも揃って「面白くない」。そもそも日本人を相手に想定したネタとなっており、外国人のツボにハマらないのは無理もない。技術情報サイトIEEE Spectrumによると、日本人に対する反応を調査した結果、「(サザエさんの)マスオさん」や「(COWCOWの)あたりまえ体操」「ケイン・コスギ」のモノマネはそれなりに笑いをとれたようだが、ロボットダンスや毒舌ネタなどは反応が薄かったようだ。お笑いのレベルはさておき、開発者はコビアンのネタを見る前と後では、対象者のストレスや怒りなどの心理的不快感レベルが改善されているとして、「人を癒す」という効果は十分に見込めると述べているという。

【ユーモアとは?】
 コビアンのネタは面白くはないが、開発者たちが「人間を笑わす方法」を分析している点は興味深いと業界紙SD Timesなど多くのメディアが研究の本質に着目している。高西氏らが発表した論文によると、様々なお笑い本を研究した結果、笑いを引き出すには①おかしな行動(ダジャレ、オーバーリアクション、下ネタ等)②おかしなネタ(定番ギャグ等)③おかしなキャラ(自意識過剰、自虐的等)にまとめることができるという。

 いささか単純なようだが、笑いの性質を分析するのと、実際にロボットにその能力を吹き込むのではワケが違う。しかも、笑いのツボは十人十色だ。果たしてユーモアをプログラミング可能なコマンドに分析し、コード化することはできるのだろうかとSD Timesはその可能性を推し量ってしているようだ。高西チームは今後より高度なお笑い技術を仕込みつつ、人の反応を理解しながらネタを展開していくコミュニケーション能力も開発していく意向だという。

【コビアンの将来性】
 障害物を察知して停止するスマートカーなどは良いが、「おかしなロボット」などはそもそも必要なのか?技術が発達したところで科学で完全なる人工知能やユーモアは実現できるのか、とオーストラリアの日刊紙The Courier-Mailは疑問を投げかけている。

 一方で、ユーモアが文明の進化の中で利他的なものとして生み出されてきた要素だとすれば、これからの人類の発展のためにも何かしら役立つものであり、追求するべきことなのかもしれないと業界サイトGeek.comはその可能性を評価している。ユーモアの完成度はさておき、親しみやすい点は実生活の中でロボットが浸透していくためにプラスとなるだろうとしている。

 科学技術が進化していく中で、より高度な課題に挑むコビアンの前途は果たして大ウケとなるだろうか?

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Text by NewSphere 編集部