住宅が“資産にならない”のは日本だけ? 海外紙が日本のねじれた住宅事情を分析
日本では住宅が将来的な資産にならない。築15年後の時点で住居の価値はほとんどなくなる。海外メディアは複雑な日本の住宅状況を取り上げた。
【日本の住宅の現状】
英ガーディアン紙によると、日本家屋は築15年減価し始め、30年でほぼ価値をなくす。立地条件などの利点があってもこれは変わらないという。築200年の建物が最も好まれる西ヨーロッパなどとは対照的であると、日本在住の英建築家アラステア・タウンセンド氏は話す。「環境的にも経済的にも持続可能でない。価値のない住宅のローンを必死で返していることになる」と、指摘する。
日本の住宅市場に詳しい、ペンシルバニア州立大学の吉田二郎助教授は、「政府が耐震の基準を10年ごとに更新するため、リフォームにお金をかけるより新しい住宅を買う傾向がある」と、分析している。日本の経済には良いが、住宅の所有者には頭痛の種となっている。所有者は価値をなくす住宅の管理・手入れを怠りがちだという。
建設、取り壊し、再建という繰り返しになる住宅の使い捨ては、建設ブームであるのに住宅は増えないというねじれた市場を生みだしている、とガーディアン紙は分析した。
【奇抜なデザインハウス】
『Arch Daily』では、日本で多く見られる奇抜なデザインの住居について取り上げている。西洋では社会規範から逸脱することは、実用性に欠き趣味が悪いなど将来的な買い手にとっての住居の価値を下げかねない。大胆なデザインは投資リスクがあるため、個人的な好みはおさえる傾向にある。
対照的に日本では将来的に売るつもりがないので自由に試すことができる、と『Arch Daily』は指摘する。富裕層が建築家を雇う他の先進国と異なり、日本では初めて家を買う若い人たちが建築家を雇う。一生その家に住むことになるとあきらめているからだろう、と同サイトでは分析している。
【日本社会の富の構築に影響】
ニュースメディア『Tree Hugger』は、日本の家庭にとって住宅は明らかに非効率的な資産だ、と論じている。売買が困難であるだけでなく、購入後確実に減価するという特徴は、日本家庭の富の創造に大きく影響している、と見ている。
経済学者リチャード・クー氏によると、独特な状況によって世界中でも最も特異な住居を作り出してきた日本では、取り壊しては再建するという、経済不況に貢献しかねない状況に陥っている。この継続的な循環が、日本の家庭が富を築き上げていくことを妨げ、“裕福な社会”の構築を阻んでいる、と分析する。
【読者の反応】
ソーシャルサイト『レディット』には読者のコメントが寄せられている。
・30年後に残るのは土地の価値。壊して新しく建てるというのは理にかなっている。
・もし日本で安い家が買いたければ築10年になる家を探さなければ。
・日本の住宅はいかに安く建設するかで、長く維持できることは考えていない。
・西洋に比べて、新しく建設するときの費用が安いに違いない。
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