“東電任せは限界” 福島第一原発の汚染水漏れ、海外メディアが警鐘
東京電力は20日、同社の管理する福島第一原子力発電所施設内の汚染水貯蔵タンクから約100トンの放射能汚染水が漏れ出した、と発表した。
東電によると、汚染水漏れは19日に発見された。注水用のふたつのバルブが間違って開いたままになっていたため、汚染水がタンクの周りの堰を超えて溢れ出し土に染み込んだという。20日にはタンクへの注水を中止し、漏洩も止まった。汚染水が漏れたタンクは、海岸線から700m離れており周辺にも排水路はないため、海に流れ出してはいないだろう、と同社は説明している。
【1リットルあたり2億3000万ベクレル】
過去6ヶ月間で最悪の事態だ、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。2011年3月の事故以来、最も汚染濃度が高い水が漏れ出した。漏れ出した汚染水と同じタンクの溝から採取した水は平均で、1リットルあたり2億3000万ベクレルという超高濃度の放射性物質を含むものだった。汚染水に含まれるストロンチウム90は、日本での飲用水としての基準の380万倍もの濃度だったという。ストロンチウム90は、カルシウムと同じように体内に取り込まれ、骨のガンや白血病を引き起こすとされている。
【海に流れ出す多量の汚染地下水】
東電は、事故基に流れ込む多量の地下水処理に苦労している。汚染水が海に流れ込むのを防ごうと水を組み上げ、敷地内にいくつもの貯水タンクを建てそれを貯蔵している。同社はこれまで、約34万トンの汚染水を貯蔵したが、これはオリンピックで使用されるプール135杯分以上だ、とニューヨーク・タイムズは報じている。
しかし、それ以上に深刻なのは、チェックを受けずに流れ出る汚染された地下水だ、と同紙は懸念している。ブルームバーグによると、このような汚染された地下水が毎日約300トン海に流れ出しているという。この地下水について東電の調査では、今回の汚染水漏れの現場よりさらに海近い場所で調査された値だが、ストロンチウム90が1リットルあたり500万ベクレルだったという。東電は、この数字を発表するまでに5ヶ月かかった。このことに対しても、非難が高まっているようだ。
【東電一社では抱えきれない問題】
東電が事故処理の問題を認識するのに時間がかかり過ぎる、施設内部の状態についての情報がほとんど公表されていないなどの厳しい批判を、ニューヨーク・タイムズ紙が取り上げている。CNNは、安倍晋三首相が、汚染水処理について東電一社が抱えるには問題が大きすぎるとの国内外から不安の声が強まったため、政府も積極的に関わるとの発言したことを取り上げている。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙は、日本政府は今だ、事故処理の大部分を東電に任せっきりだ、と指摘している。
日本の原子力規制委員会は20日、東電にこれ以上の汚染水漏れを起こさないよう勧告したことを発表。しかし度重なる汚染水漏れは、東電に事故基の廃炉への作業を遅らせることなく、放射能汚染の管理をさせることの難しさを浮き彫りにしている、とブルームバーグは報じている。