なぜここまで大問題に? 製薬大手ノバルティス不正論文事件、家宅捜索へ

 東京地検特捜部は19日、血圧降下剤「ディオバン」の不正論文事件で、スイスの製薬会社ノバルティスの日本法人ノバルティスファーマを家宅捜索した。同社には1月、誇大広告のかどで厚生労働省から訴状が出ていた。

【バルサンタンの不正論文】
 同社はディオバンの広告に、その成分であるバルサンタンについての、2007年東京慈恵医科大学らの論文を引用していた。

 論文の内容は当初から不自然と疑われており、のちにデータ改ざんや、同社元社員・白橋伸雄氏(昨年退職)が身分を隠して研究に関与していたことが発覚。論文は撤回されていた。

 バルサンタンに降圧効果があることは確かであったが、それとは別に脳卒中や心臓病の予防効果があることを示すため、ライバル薬より好成績であったバルサンタンの降圧成績を、あえてそれらと同程度に改ざんしたとされている(血圧が下がれば脳卒中や心臓病は自ずと起こりにくくなるため、そのままでは比較が成り立たない)。

 同社は当初、こうした不正への関与を否定していたが、のち認めるに至り、コンプライアンス体制の強化を約束した。家宅捜索を受けて同社は、捜査に全面協力すると表明している。

 有罪となれば2年以下の懲役か200万円以下の罰金、またはその両方に処せられるが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「比較的軽い」量刑だと評している。

【主力商品と重要市場】
 ロイターは、日本はスキャンダル前にはディオバンの世界販売の約4分の1を占めていた重要市場で、2005年以降は年間1000億円以上を売り上げていたと報じている。

 ウォール紙は、2010年には(ノバルティス本体かノバルティスファーマか不明確だが)同社のベストセラー商品であったが、その後特許切れで売り上げが低迷し始めていたところ、さらにスキャンダル発覚で大打撃を受けたと報じている。昨年7~9月期の売上高は220.3億円で、2012年同期から16%減、2011年同期からは24%減となっていた。同社は現在、抗がん剤アフィニトールや多発性硬化症薬ジレニアに賭けているという。

医薬品メーカー 勝ち残りの競争戦略

Text by NewSphere 編集部