“日本のベートーベン”佐村河内氏、ゴーストライターの存在を告白 海外ファンからもショックの声

 聴覚を失ったにもかかわらず数々の名曲を発表する人気作曲家、佐村河内守氏が、自身の作品がゴーストライターによるものであったことを、2月5日に発表した。事件の影響は、本人以外のところでも広がっている。

【感動的な経歴で、異彩を放つ作曲家に】
 佐村河内氏は現在50歳。「バイオハザード」、「鬼武者」等のゲームソフトのサントラや、映画「秋桜 コスモス」の音楽を手掛けたことで、1990年代中頃から名を知られるようになった。

 英テレグラフ紙は、彼の経歴はその作品と同様に「感動的」だったとし、退行性の聴力障害を隠し、10代後半でホームレスとなり、道路清掃で日々の糧を得る生活の後に、作曲家として成功を収めたと伝えている。

 ガーディアン紙は、彼が35歳で聴力を失ったものの作曲活動を続け、代表作である原爆犠牲者への鎮魂歌「交響曲第1番 HIROSHIMA」を発表したと紹介した。

 同紙は、「自分の内なる音感を信じれば、より正しいものが創造できる。それは心と対話しているようなものだ。聴覚を失ったことは、神様の贈り物」という、2001年のタイム誌のインタビューを引用し、佐村河内氏が、「デジタル時代のベートーベン」と評されたことを伝えている。

 また、昨年3月には、東北を巡り、津波の生存者、家族を失った人たちとふれ合う佐村河内氏を紹介したNHKのドキュメンタリー「魂の旋律」が放映され、彼の評判はさらに高まったという。視聴者は感動し、津波の被害を受けた地域で「希望のシンフォニー」として知られていた「交響曲第1番 HIROSHIMA」の売り上げも大きく伸びたと報じている。

【影響は他へも波及】
 5日に佐村河内氏がゴーストライターの存在を告白した後、対応に追われたNHKの様子を、ガーディアン紙は以下のように紹介している。

 NHKは、「佐村河内氏は弁護士を通じ、作品は別の作曲家のものだったと告白した」と述べ、「取材や制作の過程で検討やチェックを行ったが、気づくことができなかった。視聴者の皆様に深くお詫びします」と謝罪した。「佐村河内氏はファンを裏切り、人々を落胆させたことを申し訳なく思い、自分のしたことにどんな言い訳もできないと知っている」というコメントも加え、彼の虚偽行為が20年以上前、聴力の悪化した時期に始まったことにも言及した。

 また、ソチ五輪のフィギュアスケートでメダルを狙う高橋大輔のプログラムが、佐村河内氏の作曲した曲を含むことから、彼もまた騒ぎに巻き込まれたと報じている。

【ゲーマーからは批判あり、擁護あり】
 さて、ゲームとゲーマーのためのサイト、Kotaku.comでは、コメントが挙がっている。
・最初から他人の手を借りたと言えばよかった。自分のことはきれいごと並べて、実は嘘ついてたことが問題だ。
・切腹もんだな。
・曲聞いて育った世代にはショックだな。
と、厳しい意見がある。

 一方、
・そんなに恥じなくても。音楽業界にゴーストライターは付き物だろう。
・同情する。耳悪くなってたんだから。
・ゲーム自体は良いから、俺に被害はない。
・ジョージ・ルーカスの「スターウォーズ」旧三部作なんか、周りの出来るヤツの意見を取り入れていい作品に仕上がった。新三部作なんか見てみろ。相談しないで自分で作ったから、クソつまんなくなってる。
など、寛容な意見もある。

「全聾の天才作曲家」佐村河内守は本物か―新潮45eBooklet

Text by NewSphere 編集部