太地町のイルカ漁に、オノ・ヨーコさんも苦言 “他国に日本を悪く言う口実を与える”
18日、着任1ヶ月となるキャロライン・ケネディ駐日大使が、和歌山県太地町のイルカ追い込み漁について「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています。」とtwitter上で発言。菅官房長官が20日、あくまで合法的な伝統漁業だと反論する事態となった。
太地町のイルカ追い込み漁は毎年9月から4月にかけて行われる。漁師が金属棒で音を立ててイルカの群れを攪乱、入り江に追い込む。数日間閉じ込めた上で選別し、屠殺、または水族館等への売却用に捕獲する(あるいは逃がす)。2009年、アカデミー賞受賞映画「ザ・コーブ」で批判的に紹介され、世界的な注目が集まった。
【一般的な残虐論争と思想対立】
英インディペンデント紙の報道は、「血まみれのイルカ」「夜通し網の向こうでもがいている約250頭」など、漁の残虐性を強調する表現が多い。漁を監視している反捕鯨団体シーシェパードによると、今年は特に規模が大きく、今年に入ってすでに170頭以上が屠殺・24頭が捕獲され、捕獲されたうち1頭は希少で高価なアルビノ(無色素症)の子供だとのことだ。
それに対し、町や県など地元は生活と伝統を訴え、外国人の介入は受けないと突っぱねる姿が描かれている。また一部の漁師が、イルカを間引かないと魚を食べ過ぎる、と主張しているとも伝えられている。「ザ・コーブ」については、当時日本の極右に攻撃され、映画館は脅迫を受け、加えて太地町当局も、製作者は漁師を「心理的に拷問した」と批判した、と説明している。
ケネディ大使の発言についても、大使が動物愛好家だからだという見方があることのほか、「西洋の批判に憤慨するナショナリストから反発を買った」との説明を伝えている。「なら広島への原爆投下や日本都市の無差別爆撃、アメリカの中東での虐殺はどうなんだ?」というインターネット投稿も拾われており、思想対立的側面が強調されていると言えるだろう。
【伝統食文化ではなく単なる商売】
一方、ナショナル・ジオグラフィック誌は、反対派の主張を紹介している。まず、イルカ肉はすでに主要食糧ではなく、イルカ肉の水銀含有が問題になりつつあると指摘。一方、水族館向けの捕獲販売数が2000~2005年の平均56頭から2006~2012年は137頭へと2倍以上に増加している。
さらに、太地町のイルカ追い込み漁は数百年も続いている伝統ではなく、1933年に始まり、本格化したのは1969年になってからだ、と指摘している。
すなわち、この漁は今や商売に過ぎないのであり、国内のほか中国の水族館の需要増にも支えられて、イルカは1頭4万ドルから、説によっては15万ドルで売れるとのことだ。世界動物園水族館協会はすでに追い込み漁法を許容しないと宣言しているのに、日本動物園水族館協会はそれに従わず、追い込み漁によるイルカを購入し続けている形なのだという。
【とにかく外交上折れておくべきだ】
またガーディアン紙は、平和活動家オノ・ヨーコ氏から太地町への公開書簡を取り上げた。漁は日本の評判を損なうのであり、「全体像的視点から状況を鑑みる」べきだとのことだ。書簡には、「中国、インド、ロシアの大国とその子供たちに日本を悪く言う口実を与えます」「日本の将来の安全性を考慮していただきたいのです。多くの強力な国々に囲まれ、国力を削ぐチャンスを常に窺われているのです」などと記されているという。