「不思議の国」ニッポンのイメージのせい? 海外メディア「目玉舐め」誤報事件
8月、ハフィントン・ポスト(米国版)が「日本で目玉を舐めあうことが流行し、流行性結膜炎の感染が広がっている」とした報道は誤報であると訂正した。同記事によれば、前述の誤報は6月上旬に英ガーディアン紙など、多数の大手メディアで報じられていた(現在記事は削除されている)。
海外メディアによる真偽のほどが不明な日本報道はこれだけでない。10月にガーディアン紙が掲載した「日本の若者がセックスレス」という報道にも、その真偽を疑問視する声が挙がっている。
大手海外メディアの報道でたびたび見られる、日本の実態を反映しているとは思えない「日本」像。その背景にあるものは何か。
【日本で目玉舐めが流行? 誤報に対する反応】
前述のハフィントン・ポスト(米国版)の記事によると、「日本で目玉舐めが流行」との誤報は、主にサブカル愛好者をターゲットとした日本のメディアサイト『ブッチNEWS』の記事(6月7日付)が、6月10日付の『shanghaiist.com』にて引用されたことから、海外メディアで爆発的な広がりを見せてしまったそうだ。
海外ネットユーザーは、「気持ち悪い」「分からない」と、眼球を舐める行為自体に疑問を呈する人が多い。しかし中には、
・また日本が変なことやってるよ!
・彼らは次に何を考え付くのかな?
・日本は以前、電化製品やその他の分野のイノベーションで有名だったわけだけれど、どうなっちゃったんだろうね。
など、日本人や日本全般に対してのコメントも見られた。
【日本は「エキゾチック」なのか】
10月20日付ガーディアン紙の「日本の若者がセックスレスに」という報道も海外で大きな反響を呼んだ(5日時点で90894シェア、8187ツイートを記録)。同記事の後を追う形で、ワシントン・ポスト紙、タイム誌など、多数の大手メディアでも「日本の若者のセックスレス」が報じられている。
これら一連の報道に対し、東京在住のブルームバーグ・ビューのコラムニストウィリアム・ペセック氏は、同月26日付の記事で反論を展開。同氏は、ガーディアン紙の報道が「元SMクラブ勤めのセックス・カウンセラー、ロボットに興奮する男性、2次元のガールフレンド」など、一般の日本人に広く馴染みがあるとは言いがたい人物や性嗜好を集中的に取り上げているほか、記事内で使用するデータが特定の目的を持って選定されているために、実態とは異なる結論が導かれてしまっている、と指摘した。
なぜ、日本人の実態とかけ離れていると思われる「日本」像が海外メディアを賑わすのだろうか?前述のペセック氏は、「『エキゾチックな日本』像に導かれ、ステレオタイプや疑わしいデータ、大げさな記事タイトルに惑わされる外国人記者の職業病」が一因と考えているようだ。テンプル大学東京キャンパスアジア学教授であるジェフ・キングストン氏も、「今回の誤報は、海外編集者がいかにも好んで広めそうな、珍妙でむちゃくちゃな日本報道だ」とコメントし、海外が日本を見つめる際の偏った「視点」を示唆している。
確かに、海外の有名オンラインコミュニティをのぞくと、「愛猫用ワイン」「バスローブ姿の外国人男性と写真撮影ができる、花王のキャンペーン」「フクロウと戯れることができる『猫カフェ』ならぬ『フクロウカフェ』」「ぬいぐるみを世界各地に旅行させてくれる、旅行代理店」など、日本人でも知らないような「日本事情」があふれている。日本は、海外から「不思議な国」とステレオタイプ化されていないだろうか。