「JAP」は差別用語? 単なる略称? 海外で話題に

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 アメリカ最大手ソーシャルニュースサイト「レディット」に数日前、ある疑問が寄せられた。その内容は「JAPは差別用語なのか? それとも単なる略称なのか?」というもの。

 もともと投稿者自身は、JAPという言葉を差別用語だと認識していたようだ。しかし南ア出身のある白人男性から、「イギリス人(British)をブリット(Brit)と呼んだり、オーストラリア人(Australian)をオージー(Aussie)と呼ぶのと同じ、単なる略称じゃないの?」と指摘され、はたと考え込んだ挙句、レディットを「世に問う」場に選んだ模様だ。

 ウィキペディアによれば、江戸幕府の遣米使節に関する新聞報道にも現れたこの表現は、元来は単なるJapaneseの短縮形であり、蔑称ではなかったという。しかし、主にアメリカでは明治以後、日本人移民の増加と現地住民との摩擦のなかで、日系移民排斥の風潮が高まるとともに、JAPには蔑称の意味合いが強くなった。

 さらに、第二次世界大戦当時には反日プロパガンダに盛んに使用されたため、蔑称として定着したのだという。

◆人種やルーツで分かれた意見
 ルーツも年齢も異なる人々から、様々な意見が寄せられた。

・自分(アメリカ人)は蔑称だと思っているし、知る限り、日本人もそう感じているはず
・アメリカ以外の英語圏では、単なる略称。自分の周囲の日本人もなんのマイナス感情も交えずにこの言葉を使っているよ
・イギリスに30年以上暮らしているイギリス人だけど、「ブリット」や「オージー」と同じなんてありえない。明らかに差別用語だよ
・オーストラリア人は英語圏で一番日本を嫌っている国。そこで「JAP」が単なる略称で使われているハズがないでしょ

 さらに、当事者に最も近い日系アメリカ人4世からは、「日本に住む日本人には理解できないだろうが、自分たちアメリカ移民にとってこの言葉は、第二次世界大戦中、住む家も尊厳も奪われ、収容所に連れて行かれた屈辱の歴史そのもの。自分にこの言葉をかけてくるヤツがいたら、悪気があろうがなかろうが、ぶちのめす」という生々しい怒りの声が寄せられた。

 ただ、一部にはJAPを大学の「日本」や「日本語」という専修を表す語として使っているという国もあり、投稿者のなかには、「昔は蔑称だったんだろうけど、だんだんその意味が薄らいでいるのでは?」という意見もあった。

◆所詮、肝心なのはバランス感覚と思いやり?
 多くの共感を呼んだのは、以下の冷静な意見だった。

・あらゆる物事と同じで、問題は文脈だ。大学での分類上「JAP」という言葉を使う人もいるし「くそったれの、汚いジャップ」と言う人もいる。前者は単なる略称、後者は人種差別用語だ。たとえば、アメリカの黒人社会では驚くほど多くの人種差別的な言葉があるようだが、その一つをまったく知らないで、うっかり口にしたからといってその人を責める理由になるだろうか?

 一方、たとえ「悪口」だという認識がなくても「差別用語として使われうる」という認識があれば、使うべきではないという意見も共感を呼んだ。

・悲しいのは、「自分の国では悪い言葉じゃない」という理由で、日本人でもないたくさんの人たちが、人種差別的な言葉を使っても構わないと考えていること。傷つく人が大勢いるとわかっているのに「傷つくのがおかしい」なんて言い分は通らない。言葉の裏にある歴史に対して無神経すぎる

 結局は、聖書に書かれる古からの知恵「黄金律」に立ち返り、「何事でも人々からしてほしいと望むことは,人々にもそのとおりにせよ」ということだろうか。

Text by NewSphere 編集部