スタバも始めた「保留コーヒー」 日本でも広がる新たな寄付の形とは
世界中で広がる寄付行為「Suspended Coffee(保留コーヒー)」の波が日本にも訪れ、関心を集めている。その理念に共鳴し、実際に参加するレストランや食堂が登場している。
【全世界に広まった「前払いの善意」】
保留コーヒーとは、「飲物や食べ物を必要としている誰かのために、事前に料金を支払う」という助け合いのシステムだ。
その起源は、ナポリの純粋な助け合いの風習「Café pendiente(保留コーヒー)」である。カフェやバルでコーヒーを1杯注文する際、計2杯分の料金を支払い、その場で「Café pendiente」と言い添えるだけで、「お金の持ち合わせがない誰かに、1杯サービスしてあげて」という寄付になる。
このイタリア発「1杯の寄付」は、地中海を越えてスペインからモロッコに、また大西洋を渡ってアルゼンチンから南米社会へ急速に広がり、今夏には中米にも協賛店が現れた。現地報道によれば、パン、牛乳、オレンジなど、前払いの寄付の対象も多様化しているという。
さらに、ラテン系社会のみならず、文化の異なる中国や台湾でも、今年から「保留麺」の提供が始まり、現地で話題を呼んでいる。
【草の根運動が実を結び、企業の参加とCSRに発展】
この「市民1人1人の素朴な善意」に協賛する店舗は各国で数を増し、社会に根づき、ひいては組織化や大企業の参加に結びついた。以下は現地報道の一部である。
例えばイギリスのスターバックスは今年4月、「Café Pendiente」の理念に共鳴すると公式発表。同社のCSRとして「Suspended Coffee(保留コーヒー)」を導入した。これはコーヒー1杯を注文する時に2杯分の料金を払うと、その際の「Suspended Coffee」の一言で、1杯分の代金が慈善団体Oasisに寄付されるシステムである。
またこの寄付の発祥の地ナポリでも、2010年に保留コーヒーネットが立ち上がった。この運動を記念し「保留コーヒーの日」(12月10日)も制定されている。
南米でも、アルゼンチンでNPOが設立。「コーヒーが保留できるならピザでも可能」とのアイディアから、参加店舗の店頭には「保留食事」の看板が掲げられる。
【日本でも活動がスタート】
保留コーヒーとは、「お金単位」ではなく「物単位」の寄付であるといえる。1人1人の善意と店舗の賛同によって世界中に普及していった点が特徴的だ。
この度日本でも、「保留コーヒー Suspended Coffee Japan」というFacebookページが立ち上がり、情報発信、チラシの配布などが行われている。川崎の「Trattoria le Sarde」など、理念に共感して導入する店舗も出てきており、さらなる店舗の参加と協力が待たれる。