「教育界のオスカー賞」、英国の日本語教師が獲得 授業の魅力とは?
英国の日本語教師クリスピン・チェインバース氏が20日、毎年優れた教育者に贈られるピアソン賞の「南西イギリス最優秀教師賞」を受賞した。ピアソン賞は、中等教育の教師に送られる「教育界のオスカー」ともよばれる賞だ。
同氏の受賞は、魅力的な授業と、それによる大きな成果、日本との結びつきの中での教育をすすめたことが理由であった。現在、第7学年からAレベル(13歳~18歳)までの約1200人の生徒が、チェインバース氏の日本語の授業を受けている。これは、英国で最も大規模な日本語学科のひとつだ。
【教室の外をも巻き込むという発想】
チェインバース氏は、日本語教育の新しい取り組みを1990年代に始めたが、当時は、誰もそれがうまくいくとは思っていなかった、とBBCが報じている。
しかしいまや、毎年50~60人の中学生が、義務教育修了時に受ける中等教育修了試験(GCSE)で、非常に優秀な成績を収めている。また、彼の授業は、ノッティンガム大学やセント・マーク・アンド・セント・ジョン大学の英国公立学校教員コース(PGCE)の生徒からも高い信頼を寄せられているという。
同氏はこの他、11歳~14歳の子供たちを日本大使館の主催する日本語のスピーチコンテストに参加させ、日本への交流訪問も毎年企画している。
さらに、第7学年(13歳)が対象の書道教室を運営し、小学校の教師たちとも連携している。
ひとつの教室の中だけではなく、より広い範囲を巻き込んで、教育を進めていくという同氏の発想は、高い評価を受けるに至っている。
【言語教育の可能性】
英国では、外国語習得の水準の低さは問題となっていたようだ。また、日本語や中国語などの言語は、私立学校の優秀な生徒だけが教わるべきものだと考えられてきたという。しかし、チェインバース氏は、多くの生徒への授業を通してわかったことは、すべての子供たちにそれらの言語習得は可能だという事実だそうだ。
同氏は、生徒が言語習得で広がる可能性に思いを馳せること、その可能性に外国語を学ぶ真の価値があるということを理解させれば、学習意欲を向上させることはできると話す。
そして、日本語学習は、大学を受験するためというだけでなく、身につけた日本語を話す能力が、社会に出た時に、銀行や医療、法律などの分野で大いに役立つと、言語学習が実社会とつながっていることを強調している。
【日本で再認識した「学ぶ喜び」】
チェインバース氏が、初めて教師としての体験をしたのは日本だった。そして、日本で人々が教師へ向ける尊敬の心に感銘を受けたと話す。その心は「学ぶ喜び」から生じたものだと、同氏は説明している。
日本では、「生徒の親たちが、道で出会っても、子供への教師たちの指導に礼を言ってくれる。」英国の教育も、「学ぶ喜び」の大事さを再認識するべきだ、と日本で感じた教育への姿勢を評価している。そして、「一人の教師が、その子の将来を決めるということもあるのだから。」と教師の責任の重さを実感しているようだ。