「氷の壁」で、福島原発の汚染水漏れを防げるのか?
28日、原子力規制庁は正式に、福島第1原発の新たな汚染水漏れの事故評価を、国際原子力放射線事象評価尺度(INES)でレベル3、すなわち「重大な異常事象」へと引き上げた。従来はレベル1であった。INESスケールはレベル0~7で、最大のレベル7には2011年のメルトダウンや1986年のチェルノブイリ事故が該当する。
【東電は潰すべし】
ロイターは、「過去の過ちから学ぶことができない」などとして東京電力の危機対処能力を見限る、泉田裕彦・新潟県知事、佐藤雄平・福島県知事、田中俊一・原子力規制委員長らの発言を伝えた。新潟県は世界最大の原子力発電所である柏崎刈羽原発を抱えているが、泉田知事はかねてより、現状ではその再稼働は認められないと主張している。泉田知事は「目先の資金調達への関心が、問題の解決よりも優先されている」などとして、東電の解体を示唆するに至った。
【政府は東電を外さず】
しかし、経産省の事故対応当局の新川達也室長は、東電の対策について監督を強化すると述べた。新川室長は「これは東電の施設であります。同社は福島第一のすべての技術、すべてのマップ、すべての技術データを持っています」と発言している。安倍晋三首相も「確固たる国家戦略」を謳って、東電サポートのため予算と人員の拠出を約束している。フィナンシャル・タイムズ紙はこれを、前述のような危惧に反して、東電を引き続き事故対応にあたらせるという意味だと報じた。
なお東電は、昨年、1兆円を注入されて事実上国有化されていること、またさらに1兆円の銀行融資を受けることも各紙は伝えている。
【氷壁は実現可能なのか】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、政府が招集した専門家パネルにおいて、地盤を凍らせた「氷の壁」で汚染水を防ぐ計画が検討されていると報じた。
これは鹿島建設が提案していたもので、原子炉周辺の地盤に1540本のパイプを打ち込んで超低温の液体を注入、長さ1マイルにわたって地下氷壁を構築するというもの。汚染水も氷壁に達すれば凍結する。工期は2年未満であり、他のタイプの物理的障壁を建造するよりも早いという。
だが、建設費は数百億円、維持費は年10億円に及びうるとされる。冷凍状態を維持するため、電力も常時必要だ。皮肉な事に、原発をほとんど停止させている日本では、高価な輸入化石燃料への依存が高まることになる。
さらに、米国の地盤凍結の専門業者は、これほどの規模の工事は前例がないと、不測のリスクを警告している。ノウハウを持つ業者が少ないうえ、危険な高放射線地域での作業になることも懸念点とされている。