中国離れる富裕層、世界最多1万5200人 巨額の資産持ち出し その理由、人気の移住先は?

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◆平等図る「共同富裕」の政策が裏目に
 富裕層たちが相次いで住み慣れた母国を離れる背景に、習近平国家主席が進める共同富裕政策がある。

 習氏は2021年から「共同富裕」を掲げている。富の再分配により社会の不平等を是正し、全体的な生活水準を向上させることを目指している。高所得者層や大企業から税金と寄付を集め、低所得者層や地方の発展を支援することが柱だ。

 富裕層にとってこの政策は、税負担の増加だけではないリスクがある。ガーディアン紙は、共同富裕政策の一環として、富裕層や大企業に対する規制や監視が強化されていると指摘する。アリババの創業者である馬雲(ジャック・マー)氏は2020年に中国の規制当局を批判したが、その後アリババは厳しい規制の対象となり、彼自身も一時的に公の場から姿を消した。

馬雲氏(2019年5月)|Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

 こうした規制・監視の強化により、富裕層は自身の財産やビジネスが政府のターゲットになることを恐れている。このため、多くの富裕層が資産を海外に移動させ、居住地を移すことを選んでいるのが実情だ。

 加えて、生活環境の改善も彼らのねらいの一つだ。ニューヨーク・タイムズ紙は、特に、子供の教育や安全な生活環境を求める親が多いと指摘する。

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Text by 青葉やまと