「こんなに面白い会社は他にない」 アルバイトからスタートして、5億円を集めて独立へ

萱場 俊克(CLASSIC INC. 代表取締役社長)
18歳の時に仙台で飲食業界の道に進み、仙台と東京で多くの新規店舗を立ち上げ。2016年6月1日、自ら立ち上げを行なった東京の店舗を買い取る形で、CLASSIC INC.を設立し独立。1972年生まれ。

 私は18歳のとき前オーナーのもとで飲食業界に入って、それから辞めずに続けて30年近くになりました。スタートは、地元の仙台でのアルバイトからでした。

 22歳でDJバーの立ち上げを任され、23歳でダイニングバーをオープンしました。90年代のワインブームに乗って、エレベーターのない3階の店舗にもかかわらず、1階までお客さんが並ぶような繁盛店になりました。

 仙台でのお店が5〜6店舗になったとき、1年間仙台での仕事を休んで東京に出ることにしました。夜は西麻布のバーで働いて、昼は出店先を探すため街をぶらぶらしました。最初は1年間という約束でしたが、半年ぐらいで現在のALMAの場所を見つけて、東京進出の1号店となりました。それを皮切りに東京でも次々と出店を続け、仙台と東京で多くの店舗を持つ会社になりました。

東京進出第1号店となったALMA

 そんな中、当時のオーナーから仙台と東京で会社を分割したいという話が出てきました。考え方の違いから、そのタイミングで、東京の8店舗を引き継いで完全独立しようと決めました。引き継ぐには店舗を買い取らないといけなかったのですが、理解のある銀行からの融資もあって、5億円をなんとか準備することができました。

 いまの取締役の4人は、全員そのとき付いて来てくれた仙台時代からの仲間です。現在は、2018年9月に会社をホールディングス化し、飲食事業の株式会社CLASSICの他、CLASSIC & SESSIONS(デザインサポート)、CLASSIC & LAB(社員教育)、CHAUSSE-PIED(美容室)など多岐にわたる事業を展開するグループになりました。

経営スタイルについて語る萱場氏

◆CLASSICは「スケルトン経営」
 CLASSICの経営スタイルは一言で言えば、「スケルトン経営」です。私は過去の経験から、会社の不透明な部分をなくし、社員との約束を守ることで、仕事と夢に打ち込める環境を作れると考えています。具体的には「権限委譲」と「情報開示」を徹底することです。

「権限委譲」としては、各店舗の売上や経費は基本的にすべて店長に任せています。売上と経費を全て任せるので、予算を超えた利益の配分も店長に権限委譲しています。予算を超えて利益が出た場合には、その50%は店長の権限で社員に分配できるようにしています。

「情報開示」については、取締役を含む社員全員の給与テーブルと経費を開示し、全員がアクセスできるようにしています。これによって、全員が自分の役割を果たしながら、納得感が生まれるようになります。

 この「スケルトン経営」以外にも、CLASSICならではのユニークな仕組みを作りました。

<チャレンジ店舗制度>
 飲食業界には、いつかは「自分のお店を持つ」ことを目標にしている人は多いです。けれど、資金、人手、仕入先や情報などいきなり全部を揃えるのは現実的に非常に難しいですし、リスクも個人で抱えるには大きい。私もそうした大変さを経験して、社員の「自分のお店を持つ」という夢を叶える手助けができないかと考えて始めたのが、チャレンジ店舗制度です。

 これは、分社化や独立を視野にいれて、独立採算で運営するチャレンジ店舗を立ち上げる制度です。今は〈berkana〉と〈瑠璃〉がチャレンジ店舗です。店舗立ち上げの一番難しい部分を会社のサポートで挑戦できることがメリットだと思います。チャレンジ店舗がうまく軌道に乗り、その時に店長に意思があれば、グループ内の横のつながりを活かした分社化や独立といった形で「自分のお店」として経営していくことができます。

チャレンジ店舗の瑠璃

<チャリティー>
 もともとチャリティーイベントやフェスをやりたいという気持ちがありました。現在は年に1回、都内の3店舗でその日の1日の売上を全額寄付するという取り組みをしています。2019年は3月4日の3店舗の売上全額を、女川町、女川水産加工研究会、TAAAの3団体に寄付しました。こんな思い切ったチャリティーもでき、飲食の可能性を感じる取り組みです。

寄付先のひとつ、女川町の小学校で実施した「女川こどもレストラン」の様子

<研修制度>
 国内、海外を問わず、毎年現地視察や研修を行なっています。2019年は広島の日本酒の酒蔵さんにお邪魔して、お酒の作り方を学んだりしました。毎年選抜メンバーで行っているのですが、年功序列ではないです。今年は入社したばかりの社員にも店舗での日常業務をこなしながら調整をして行ってもらいました。

海外研修で訪れたイタリアのワイナリー

◆これからのこと
 CLASSICとしてこれからチャレンジしたいのは、業界特有の慣習である「背中を見て覚える」ことを理論化して、飲食のプロ集団を生み出すことです。

 せっかく自分の人生の時間を使うのだから、何をしたらどういう能力が得られるのか理論になっていることが大切だと思います。社員教育には投資を惜しまないし、そのためのグループ内の研修組織として、CLASSIC & LABという子会社も作りました。

 CLASSICはこれからも進化していきます。今後は飲食に限らず、欧米の民泊のような旅館業にもビジネスを広げていくことを計画しています。もし、チャレンジを続けるCLASSICに少しでも興味を持ってもらえるのであれば、ぜひ話だけでも聞きに来てほしいです。

◆株式会社CLASSICの募集中の求人

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蒸し料理にこだわるコリドー街の有名フレンチバルのキッチンスタッフ|French Bar VAPEUR
スパイスを用いた料理が多彩 路地裏ビストロのキッチンスタッフ|TAVERN Corner
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Text by heywork